One Counselor's Remorse —ひとりのカウンセラーの悔恨—

Yuza「前回、あなたが最後にお話ししたのは『何か大きなことをしなければならない。』とか…『自分には、その義務がある。』という強迫観念を今のあなたが抱えていると同時に、でも自分は『それに応えることはできるか。』とか、『応えたくない。』という感情があなたのなかで起きているということでしたね。」

 

Wes「Yes.(うん。)」

 

Yuza「『どうして僕が…?』という気持ちもあると言っていましたね。…それで、自分に、あなたにそのような感情が起きるのは、『何がそうさせるのだろう。』という問いと共に、あなたはそれを、その『大きなこと』を実行しない為に、『リミット(限界)』を持たなければならない。という想いにも今あなたは苦しんでいて、あなたはそこに『境界線』が必要であると感じている。何故なら、リミットを設けなければ、『何か悪いことが起きる。どこか悪い方向へと行くかもしれない。』とあなたは感じているから…。というお話でした。」

 

Wes「Yeah.(うん。)でも僕は、『絶対的なことをしたい。』と今、願っているんだ。」

 

Yuza「それは先週にお話ししてから、そのあとに起きた感情ですか?」

 

Wes「Yeah. そして実際、僕の人生にとってとても大きなことをしなければ、…僕はもうこの先、生きてゆけるような気がしていないんだ。」

 

Yuza「この一週間に、あなたのなかに起きたことについて、お話して貰えますか?」

 

Wes「…《12秒沈黙》僕は、三日前に、自殺しようと思ったんだ。…でも、それをしないことに決めた。代わりに…僕の限界を試すことに決めたんだ。」

 

Yuza「…。お父さんか、もしくはRD(セックス関係にある既婚女性)と、何かあったのでしょうか…?」

 

Wes「…。特に…。彼女とは、もう別れることにしたんだ。彼女は夫と別れるとずっと言いつづけながら、別れる気はどうやらないみたいだし…。」

 

Yuza「あなたは『自分を護る必要がある。』と言っていました。その為に、別れる決心をしたのでしょうか?」

 

Wes「…。もう、そういったことは考えていない。僕は寧ろ、護る必要性のあるものなど、何もないんだとわかったんだ。」

 

Yuza「…。何故、そのような変化があなたのなかに起きたのでしょうか…?」

 

Wes「…僕は、最初から何も持ってなどいなかったことにようやく気づいたんだ。そして僕は実際、本当に何も求められてはいないし、この世界に対しても、僕は何も提供しては来れなかった。」

 

Yuza「あなたは『何かを求められたいわけではない。』と言っていました。でもやっぱり何かを求めていて…そして求めても何も求められないんだということに気づいたということでしょうか。」

 

Wes「《18秒沈黙》…僕はもう自分の後ろに隠れることが嫌になったんだと思う。」

 

Yuza「それは自分自身の…強く理想的な自分のイメージとする盾のようなものの後ろに隠れる感じのイメージでしょうか…?」

 

Wes「(首を横に振る)…わからない。ただ僕は…とても遠くまで冒険しに行きたくなった。もうここにいることに、僕は堪えられるような気がしないんだ…。」

 

Yuza「…。具体的に、この一週間の間にどのようなことがあなたの感情のなかに起きたのかを、教えて貰えませんか…?」

 

Wes「…僕のなかに閃いたというよりか…ずっと奥の方で温まっていたものがやっと形となって来て、…それで僕の外に、それは出て、…凍えている…。僕は、ある種のとてもでっかい、ほとんどの人にはできっこないような凄いボランティアを独りでしなければならないんだ。そしてそのすべてに僕は全責任を負わなくてはならないし、それは僕のなかに、僕の今の世界に起きている僕に対する絶対的な義務であると感じている。」

 

Yuza「…それはまるで…どこか、とても深い苦痛を伴う一種の《自己犠牲》というものであるかのように感じますが…。そのようなイメージでしょうか…?」

 

Wes「…。よくわからない…。ただ僕は…その境界線をなくし、僕にその権利を与えられて、激しく要求されていると感じる。」

 

Yuza「だれからそれを要求されているのでしょうか…?」

 

Wes「…ほかのだれでもない、僕自身…。」

 

Yuza「…。あなたはあなたのなかに、色んな『人格』が存在していると言っていました。そのすべての人格のあなたが、それについて同意しているのでしょうか?」

 

Wes「《58秒沈黙》…。僕のすべては…僕がそれを行うことができると思う。僕には今、限界がないと信じていて、僕はそのすべてを行うことができると思っている。」

 

Yuza「…あなたのなかにはとても寛大で、合理的で、自分自身に対するとても深い自責の感情を持つあなた、それを自分に対して求めているあなたがいますよね。…あなたが今、仰っていることが、どこか…何か破壊的な要素を持つようなことに想えてしまうのですが…それを…実行することが、本当にあなたのなかで素敵なことであるのでしょうか…?」

 

Wes「…僕はそれを、みんなから頼まれていると感じている。僕自身も、それこそが、遣りたいことなんだ。」

 

Yuza「『みんな』とは、だれのことでしょう…?」

 

Wes「…All.(すべて。)」

 

Yuza「今、あなたのなかに、そのことを実行することについて、動揺しているあなたは本当にいないのでしょうか?」

 

Wes「(首を横に振る)」

 

Yuza「…今、あなたは、それを実行しようとしている。今あなたは、安心していますか?」

 

Wes「…。僕は、『安心』というものを求めたことはないし、それが必要であると感じたことはない。」

 

Yuza「…でもあなたは…U(4歳の男の子)が自分の膝に乗っかってきたとき、『あたたかさ』を感じて、そしてその温かい感触によって心地良さを覚え、そしてあなたはそのとき…勃起したと言っていましたよね…。それは『安心』の感覚ではなかったのでしょうか…?」

 

Wes「《長い沈黙—1分10秒》……。わからないけど…僕はもうそれでは満足はできないということがわかって、それで…きっとそれ以上のものを今は求めているんだと思う…。」

 

Yuza「…想うのですが…『それ』は、本当に、あなたの"力量"以内のことなのでしょうか…?何か、取り返しのつかないことが起き、そしてあなたは、そのことをあとで後悔しないでしょうか?」

 

Wes「…どうなるかは、僕にもわからない…。でも僕は、今、ここから飛び出さなくてはならないんだ。もう、頼まれたことだけを遣りつづける日々には戻るつもりもないし、また同じようなことになって、自分と、相手に対して嫌気が差すのも、もう嫌なんだ。…僕はもっと…自分をストレートに表現してゆくことに決めたんだ。」

 

Yuza「あなたは自分が、あなたの母親そっくりの、《従属的生き方》をしてしまっていることに対し、自分自身に『怒り』を感じていると仰っていましたね。」

 

Wes「Yeah.(そう。)」

 

Yuza「あなたはお母さんのことを『何も知らないんだ。』と言っていましたが、お母さんに対する気持ちの変化など、何かありましたか…?」

 

Wes「(首を横に振る)」

 

Yuza「あなたは御両親のどちらにも好きというような感情を持っていないが、どちらかと言うなら、お父さんの方が好きだと言っていたことには変わりはありませんか?」

 

Wes「《53秒沈黙》……。」

 

Yuza「…あなたは幼い女の子を含む《女性全般》に対し、《脅迫されている》という感覚があり、同時に、年齢問わず、『女性(女の子)に対して、自分に本当に酷いことができるとは思えない。』と言っていました。そのことについても変化はありませんか?」

 

Wes「…。今はその境界線を取っ払えるように感じているんだ…。」

 

Yuza「…それはつまり…女の子に対しても、男の子に対するのと同じようにレイプ願望や、殺害願望が芽生えるようになってきたということでしょうか…?」

 

Wes「《長い沈黙—2分11秒》………。」

 

Yuza「あなたが、女の子よりも、男の子を好むのは、あなたのなかにある《母親に対する失望や同族嫌悪的な感情》が関係しているのではないかと前にわたしはあなたに言いました。あなたは自分が、男性よりも、女性的であって、そして母親と自分が似ていることを自覚しています。この感覚にも変化はありませんか?」

 

Wes「…。今は…、よくわからない。mom(母)はいつもdad(父)に対してずっと従属的ではあったけど、でも実際に優勢であったのは、momの方なんだ。」

 

Yuza「あなたが15歳のときに離婚するとなって、そのときにあなたのお父さんは自殺未遂をしていますね。依存して、寄り掛かっていたのはお父さんの方であって、実際に支配的な力のあったのはお母さんの方だということでしょうか?」

 

Wes「(頷く)」

 

Yuza「つまり…こういうことでしょうか。実はあなたが、本当に嫌悪的感情を抱いているのは、従属的で、女性的であったお母さんに対してではなく、ある意味、お父さんに対してとても支配的な立場にあり、隷属的存在のようにお父さんを陰で支配しているかのようだったお母さんの一面に対して、ということなのでしょうか…?」

 

Wes「《39秒沈黙》…。僕は多分…dadの気持ちはいくらかは理解しているが、momの気持ちは一切…何も理解できるものはないんだと思う。」

 

Yuza「…それはあなた自身が《男性》であるからなのでしょうか…?」

 

Wes「…わからない。」

 

Yuza「…あなたのお母さんから、もうお父さんを許せないとなって…そしてお母さんからお父さんに離婚を言い渡しましたよね…。そしてその、《離婚》という重大で決定的な方法があなたをずっとずっと、潜在的に苦しめつづけてきたであろうとわたしは感じているのですが…あなたが、今、考えている、《重大で絶対的な大きなこと》を、もしも、この先に、あなたが実行に移したとき、あなたは心の底で、もっと別の方法で解決する方法を見つけようとしなかったあなた自身を責めつづけることはないでしょうか…?」

 

Wes「《長い沈黙—2分17秒》………。」

 

Yuza「あなたは、お父さんに対してもお母さんに対しても、根本的な深い恨みを持っていて、『何故、彼らは、他の方法で解決してくれなかったのか、何故、自分(子ども)たちがいるのに《離婚》や、《自殺》といった利己的決断をしたのか。』とずっと自問してきたように感じます。…一言で言えば、『何故、彼らは僕たちを苦しめる決断をしたのか?』という怒りなのではないでしょうか?」

 

Wes「…。よくわからない…。とにかく僕たちみんな、両親の毎日の口論に巻き込まれていたし、酷い日々だった。ただ…弟妹がいるなかで、僕だけが子どもたちに性器を曝すという"対処法"を取ったんだ。」

 

Yuza「あなたが性器を子どもたちに露出し始めたのは御両親が口論し始めた時期の13歳のときからで、そしてあなたの15歳の誕生日に、『僕たちは離婚する。』のだとお父さんから告げられ、そしてお母さんとの口論のあと、その日にお父さんは自殺未遂をしましたね…。そのとき、あなたのなかで…何かが完全に、崩壊したかのような感覚にあったのでしょうか…?」

 

Wes「…《18秒沈黙》彼らは…もう永久に僕らの元には戻らないだろうということを、その日に僕は感じたかもしれない。それは…どこかホッとする感覚であったけど、とても恐ろしい感覚でもあったんだ。僕たち子どもたち以上に、両親の方が混乱していたよ。それを観て、それが《大人という生物》で、《僕たちの未来》であるんだと感じて、何も信じられなくなったのかもしれない…。」

 

Yuza「両親に対する深い怒りと悲しみ、そして不安と彼らの無責任感に対する絶望や嫌悪が入り混じって、それであなたは永久に、自分のなかの《純真な子ども》を喪失してしまったかのような気持ちになったのでしょうか…。」

 

Wes「…。僕たちはどうしてこんなにも彼らのために我慢しなければならないのかと感じていたかもしれない。」

 

Yuza「お父さんもお母さんも、その決定的なことが起きる前に、限界(limit)を互いに設けて、常に不満を小出しにして話し合っていたなら、そんなことにはならなかったんじゃないかという疑問があなたのなかにあった…。」

 

Wes「(頷く)Yes.」

 

Yuza「あなたは、御両親が離婚し、別々に生きて行くことになったことに、本当は未だにあなたのなかで《大混乱》が続いていて、そしてその凄まじい混乱のなかで、自分自身に対する同じひどい混乱が続いていて、そのなかで最早、自分という存在に対してでさえ、《主導権》を握ることはできないのだという、これもひとつの強迫的な観念にあなたが襲われ続けているようにわたしには感じるのです…。」

 

Wes「…《30秒沈黙》僕自身、僕を理解できたことなんてないんだ…。」

 

Yuza「…あなたのなかで未だ、《最悪な事態》がずっと変わることなく続いている状態であるのだと想います。」

 

Wes「…。僕は彼らと良い関係を築きたいと思ったこともない…。面倒を見て貰ったという意識も僕のなかには存在しない。愛されたという感覚も一度もないし、本当にいい記憶が何一つないんだ。」

 

Yuza「あなたのお父さんは、あなたのそういった話を聴いて、あなたが『否定的なことしか憶えていない。』と言っていましたが…」

 

Wes「…《27秒沈黙》」

 

Yuza「もしかしたら、良いこともあったのかもしれない…でもあなたにとって、それを認めることが、認めないでいることよりもずっと恐ろしいことのように感じてしまうのです。」

 

Wes「…《9秒沈黙》」

 

Yuza「少なくともあなたは両親から感じ取ってきたものは《愛の不在》であって、愛のない言葉や愛のない要求ばかりであったということですね。」

 

Wes「(頷く)Yeah.」

 

Yuza「でもあなたは『自分にとっても他人にとっても、《愛》がなんであるのかわからない。』と言っていましたね。それでもあなたには《愛のイメージ》というものがあると…。今、すこし、そのイメージを言葉で表現することはできるでしょうか…。」

 

Wes「《15秒沈黙》……。それが…僕がこれから、遣ろうと思ってる『大きなこと』なんだ。」

 

Yuza「…本当にそうなのでしょうか…?何故なら…あなたは今…とても悲しい表情をしているようにわたしには感じてしまうのです…。」

 

Wes「…。あなたのその感覚は…正しく認識されて、僕の顔を通して反映されているだろうか?」

 

Yuza「…。わたしの今のこの感覚は、わたしのなかで正しいと感じます。」

 

Wes「…でもそれは間違っている可能性だってあるんだと思う…。」

 

Yuza「あなたのなかのひとりのあなたが、あなたがこれから遣ろうとしていることを、本当は悲しんでいる…その可能性はないのでしょうか…。」

 

Wes「…。僕にとって、僕がそれに気づいてしまうことは…怖いことだと感じる。僕は、僕自身によって《本当のCare(ケア)》をしようとしていると思う。でも僕は僕を完全にコントロールすることによるケアは不可能なんだ。」

 

Yuza「ある意味…あなたは最もあなたにとって"億劫"なことをこれから遣ろうとしているように感じるのです。そして今のあなたは、あなた以外のすべてがあなたに対し求めていることのすべてに自分は応えられないのだという確信的な絶望的な気持ちから、それを行おうとしているようにわたしには感じられるのです。」

 

Wes「《18秒沈黙》…。僕は一人の子どもに性的虐待をすると、また別の形を要求した。別の形で痴漢し、さらに別の形を要求するんだ。そして、そのすべてに、僕は本当は満足できてなどいなかった。『満たされている』と上手く錯覚しようとしていただけだった。この《終わりのない要求》を終わらせられるんだと思う。」

 

Yuza「…飽くなき要求なのではなく…まるでそのことに飽きる為の要求であって、その要求の連鎖を終わらせたいと願っているのですね…。」

 

Wes「(深く頷く)」

 

Yuza「あなたは今、本当に…それを待っていたように感じられます。あなたは、それを見つけようとしていたのかもしれません。あなたは、子どもたちに性的虐待をしない期間が続くと、気が狂いそうな苦しみに襲われて来ました。あなたは…本当に肉体的にも、精神的にも、"自滅"するリスクのあることを、自分自身を消耗させつづけながら遣ってきたのだと想います。…でも、それでもなお…あなたは自分のしていることが好きだと言っていましたね。」

 

Wes「…。僕には…子どもたちを尊重するという意識がないんだ…。そしてそれを僕が持ったとき、僕は生きてゆく価値はないように感じる。僕は死なねばならないだろう…。」

 

Yuza「…あなたはあなた自身の欲求に対し、最も従順で、最も純粋であるのだと感じます。…まるで、今のあなたは、あなた以外のすべての要求に応えることを拒絶し、そしてそのことこそが、あなたのなかであなたが最後に"愛されるチャンス"であるかのように確信しているように感じられます。…あなたは今まで…色んな人の言いなりとなって生きてきました。睡眠時間を削ってでも任された仕事を独りでこなし、女性からは騙されて…不倫の関係を続けてきた…。しかしようやく、そんな言いなりの人間を、一体、だれが愛するのか?と気づいたかのように感じるのです。」

 

Wes「…。僕はいつも…完全で、完璧であろうとしてきたけれども…それは全能感というより、僕という存在の義務であるように感じているんだ。…僕は何に対しても、"リラックス"できたことがない。すべてを完璧にしようとしてきたけれど、何一つ、僕にはできなかったんだと…そう、僕はやっと気づいたのだと感じる。《8秒沈黙》…。僕が幼い頃に、それに気づいていたなら…僕はもっと…別のものを必要としていたのかもしれない…。もっと違った何か…あるいはだれかを必要としていたかもしれない。…僕に本当に必要なものは、もっと違うものだったのだろう。」

 

Yuza「…あなたは…自分のなかに沸き起こり続ける激しい欲求も、自分に関わる人たちから受ける寒々しい対応もすべて、自分一人で乗り越えなければならないと感じて来た…そして乗り越えてはきたけれど…ふと振り返ると、自分が本当に望んでいるものが何かもわからないし、感じて来た快楽も喜びも楽しいこともすべて、錯覚でそれがどれほど良いものであったのか、わからなくなった…。」

 

Wes「《20秒沈黙》…僕は初めて…"一人になりたい"という明確な欲求に気づいたのかもしれない。そして…唯一、その方法が何か、僕にはわかってしまったんだ…」

 

Yuza「…。つまり…今のあなたにとって、"それ"以外のことのすべて、《絶望的》なのだと…。」

 

Wes「《11秒沈黙》…。僕は初めて、自分に寄り掛かろうとしている。僕は自分を初めて本気で助けようとしているんだ。」

 

Yuza「…。つまりあなたは…"他者"と感じるものすべてから自分を完全に切り離して…そしてそのすべてと共有するものなど存在しない…それが不可能であると確信していること…それがあなたを真剣に救いだすことに目覚めたあなたのなかで、あなた自身から手を差し伸べられている状況に、今あるのだと…そういうことなのですね…?」

 

Wes「《28秒沈黙》…。僕は…この孤独感や不安感のなかを、"彼"と一緒にゆっくりと歩いてゆくことにしたんだ。」

 

Yuza「それが"あなた"であるのですね。」

 

Wes「(深く頷く)」

 

Yuza「…その道はあなたにとって、"peace of mind(心の安らぎ)"へと繋がる道なのでしょうか。」

 

Wes「…。僕のなかでは…楽観的に考えることは全く難しいことではないから…僕にとってそれはとても明るいんだ。」

 

Yuza「あなたのなかで本当の真っ暗闇へと向かう方向とは真逆の方角であるということですね。」

 

Wes「(頷く)Yeah.」

 

Yuza「…どこかあなたがとても《新しい死の観念》を見いだしたかのように感じますが、あなたは…"死"を今は考えていないのですよね…?」

 

Wes「僕はそれは絶対的に"生への方向"であり、"生に対する欲求"なんだ。」

 

Yuza「…今ある痛みや不安から、抜けだすためのものでもない…そういうことでしょうか…?」

 

Wes「《25秒沈黙》…。僕は今、痛みや不安から最も遠い場所にいる。」

 

Yuza「今のあなたは…痛みや不安を恐れるという気持ちもないということなのですね。」

 

Wes「Yes.」

 

Yuza「……。わたしは今…何故か、不安と心配でいっぱいです…。あなたに、"それ"が何かを訊ねることができなかったのは、わたしがそれに堪えられないように感じているからだと想います…。そしてもう…時間が来てしまいました…。わたしが臆病なカウンセラーだとあなたは想っているかもしれませんね…。でも…やはり、わたしは傷ついてでも、あなたが遣ろうとしていることを知りたいと願っています。…良ければ…あなたがこれから実行しようと考えていることを、わたしに教えて戴けませんか…?」

 

Wes「……。僕に、あなたに今言えることは、"それ"は、この世界で最も"最悪な事態"よりかは、ずっとマシなものであるということなんだ。"最悪な悲劇"を回避するために、必要なことなんだ。僕が遣らなくてはならないことなんだ。僕にはそれができる。他の多くの人々には…できないだろう…。…きっと、僕はそれを遣るためだけに生まれて来たんだと思う。僕の生きる価値はそれを遂行することだけにある。そしてこの世界は…素晴らしく飛躍するんだ。僕は…すべてから"許されている"ことをする。僕は"それ"をすることを許されている。何も…何一つ残らないより、マシなんだ。恐らく…本当に急がなければならないだろう…。僕は、貴女にお別れを言いに、ただ今日ここへ来たんだ。今日で最後だからね。残念だけれど、僕はもう貴女のカウンセリングは受けることはないだろう。それよりも…僕は聖書に、決して消すことのできないペンでたくさん落書きをしながら、真剣にこれから計画してゆく。"それ"を考えるだけで、僕のcock(ペニス)はとても硬くなるんだ。」

 

そう、輝く純真な眼で言ったのを最後に、彼は彼女のもとに姿を現すことはなかった。

その日のちょうど一週間後に、彼は最初の"それ"を実行した。

その約2ヶ月半後に彼は男の子を誘拐しようとして逮捕され、3人の幼い男の子を性的暴行後に殺害した罪を自白し、約3年後に、彼は望むがまま、処刑され、31年の生涯を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Westley Allan Dodd (July 3, 1961 - January 5, 1993) ウェストリー・アラン・ドッド (1961年7月3日 - 1993年1月5日)

彼女のなかに記憶された最後のWes

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


The Smile - Open The Floodgates

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この作品はロジャーズのカウンセリング(個人セラピー)の実際

Westley Allan Dodd(ウェストリー・アラン・ドッド)
を基に書いたものです。