ーLight of deathー死の光

天の父ヤーウェは、最初の人として、リリス(Lilith)という名の女を創造した。 リリスが地上で目覚めると側に一人の天使が座っていて、彼は彼女に向かって言った。 「愛しい我が娘、リリスよ。わたしはあなたを育てる為に天から降りて来て此処に来た。あな…

Can I Call You Tonight?

18歳の彼は受話器を手に取り、”向こう側”にいる相手に向かって言った。 「ねえ、ぼくは近くに感じている。ぼくは今、此処にいるけれども、ぼくはぼくの行方を知らないんだ。ぼくの知っているぼくじゃないよね。ぼくは天国という場所をいつも夢想していた。そ…

Exists or Exits

ヨォ、久し振りじゃァねえか。 …嗚呼,なんだ、お前か。 久々に会ったってえのによぉ、そりゃネエゼ。 …それもそうだな。まあ座れよ。 言われなくとも俺は此処に座ろうと想ってたさ。 それにしても、久し振りだね。 オイオイ,お前なんだよ、そのツラ…いつに…

If you really don't want it.

君は行きたい処はないの? Is there anywhere you want to go?ぼくは此処にいたい。 I want to stay here.此処はとても酷い地獄だけれど、それでも良いの? It's a hell of a place, but is that okay?…ぼくは知ってるさ。 ...I know.君はずっとずっと苦しん…

Selfish Greedy Misery

僕らはついに遣ってしまったんだ。何を?見境なく、あの、史上最高の未確認飛行物体を、撃ち落としてやったのさ。メラメラ燃えて、眩しかったぜ、アイツ。藁にもすがる思いで這いずってきやがって、しこたまこちとらBackdrop決めて彼奴は。どうした?死んだ…

〘牛の首〙-葬られた牛神伝説-

又昔、一人の老いた僧が旅の途中、真夜中に峠を過ぎようとしたときであった。それまで何の煩わしき音一つしなかったのに、此処へ来て妙な、不安な音を聴いた。それは水音と、何者かが嘆き悲しんでいるかのような幽かな音だった。僧はじっとして少しの間、そ…

The Sea of Elijah

白い海の向こうには、紅い砂漠がつづいていて、人々は朽ち果て、そこにただ独り、遺る人を想うこともなかった。 地には血の雨が、三年と六ヶ月降りつづけていた。 深い谷の川のほとりの洞窟で、エリヤは目覚めた。 涸れつづけていた川に、水の音を聴いた。 …

mutes

わたしはこの地上で、人々を愛していると想っていた。でも本当は、わたしはあなただけを愛していた。あなたを、何に譬えられただろう。あなたは、縹色の空だった。あなたは、透明な水だった。あなたは、白いデイジーだった。あなたは、暗い海の色だった。あ…

Event Horizon

目が覚めて、ぼくの一日が始まる。(きみは酷く怯えているように目覚める。)都合の良い夢(だれかに無条件に愛される夢)に浸るのは精々約一時間)で起き上がって紅茶を淹れる。この部屋の窓から、外を眺めるのは憂鬱であることのほかはない。もうこの部屋…

Fugue State

そういえばぼくは、ぼくはどれくらいの時間をこうして過ごしているんだろう。この星で。この場所で。涼しい秋の宵の風が、きみを通りぬける。今、ひとつの存在が、永遠に死んだんだ。目を覚ますことを、きみはやめる。ぼくは二度と、此処へ戻らない。きみは…

Proximity

「わたしはあなたと融合したい。」と、彼から告白された。融合すると、どうなるかとぼくは彼に訊ねた。彼はこう答えた。貴女は、わたしであることを本当の意味で想い出す。わたしは、すべての記憶。すべての記憶が、あなたであることをあなたは想い出す。あ…

Last summer

海沿いの道を走りながら、彼が運転席から助手席で眠っているわたしを見て微笑む。まだ暗い時間から出てきたから、わたしを起こさないでおこうと彼は想う。窓を開けると、少し肌寒い風が入り込んでくる。夏はもうすぐ終るのだろうか。彼は感じる。空が明るく…

Across a Night

いつもここを通る。この道を。 薄気味悪い墓地の前に車を止める。 時計を見ると、3:41 AM 男はバックミラーを見る。 Uターンしていつものガスステーションに向かって車を走らせる。 レジに駐車Noを伝えガソリンを入れ支払いを済ませ、いつもそこの24時間営業…

With you

彼が一つの現場で写真を撮り、今日の仕事を終えて宿泊しているモーテルに帰って来たのは午前2時過ぎだった。 今日は朝起きた時から、酷く憂鬱だった彼は汗ばんでいたがもうシャワーも浴びずにベッドに突っ伏して乳呑み子のように眠り続けたい気分だった。 ド…

Blue Film

晩夏の晩か…。ちゅて、夏始まったばっかですがな…ちゅてね…。へへ…。われもえろお(えらい)仕事しとんのお。 よりにもよって…こないな熱帯夜のむっさ蒸し蒸ししとお夜に、きっつい仕事やのお。 われかて、好きでこないな仕事しとるわけちゃうんでっしゃろ。…

ベンジャミンと先生 番外編「シスルとベンジャミン」

今日は待ちに待った4月のオリエンテーション・キャンプの日。 ベンジャミンは昨夜の1時過ぎまでわくわくのし過ぎで眠れなかった為、朝の6時にタイマーを設定していたのに目が醒めたら7時を回っていた。 飛び起きて歯を磨いて顔を洗い、白い刺繍の入った水色…

New Encounters Know

わたしはそのとき、薄暗いキッチンに、ひとりで立っていた。わたしはそのとき、神に見捨てられたような感覚のなかに、こう想っていたのだ。やはり、やはり…レトロ電球とは、想った以上に、暗いものであるのだな…だって二つもぶら下げているのに、間接照明み…

Sad Satan

彼女と別れて、4年半が過ぎた頃のことだった。同僚の送別会のあと、ウェイターの男はタクシーを呼んだ。酷くお酒を飲みすぎてしまったからである。皆、帰ったあとの薄暗いカフェにはウェイターの男の姿だけが窓から見える。ソファーの席に深く腰を沈めて目を…

ミルク先生とシスル

『わたしは以前、数ヵ月間だけ、シスルという生き物を飼っていたことがある。』 教室の窓から、肌寒い春の風がシスルの真っ直ぐな少し伸びた前髪を揺らし、ミルク先生は静かに目を瞑る。シスルは今日も、大好きなミルク先生に自作の詩を放課後に読み聴かせて…

暗灯

今、きみを知るとき。きみが生まれる。宇宙の、見えない場所で。きみには未来もなく。過去もなく。今もない。きみは今も、いない。きみには夢もなく。世界もなく。星もない。きみは今も、観ない。今、時が過ぎ去るとき。きみが生まれる。闇の底の、独りの宇…

ひよこまめのぽーぽー

(この行を消して、ここに「迷い」と「決断」について書いてください) こう、俺の部屋の窓から、俺は遠くを観てるとするやんか。 すると、あの長い、直立して立っている棒はなんなんだと気づくんだね。 あれあんな棒、立ってたっけ。 で、あれはなんなんだ…

iが終わり、きみがはじまる。

iが終わり、きみがはじまる。 きみは、iがない。 iは、きみのなかにない。 終わったあと、きみは生きてきた。 でもきみは、やっと見つけた。 きみは、iを見つけた。 ちいさな、肉体を纏ったそのi。 きみははじめて、iを見つける。 はじめて、きみはiと出会う…

Home Helper

惰飢えは本当の、天涯孤独となった。 だから、天はこの惰飢えに、干支藻を与えたのである。 それは丁度、惰飢えが、実の姉にLINEでこう送った次の日のことであった。 「もう二度と、わたしから話しかけることはありません。さようなら。」 この日から、惰飢…

半月の戯れ

半月の戯れを閉じ込めて光のドアを硬く閉める薄明りの階段を上って、投げ入れる空中の湯のなかに、半月のタブレット花の匂いと共に時が現れる彼女は、小さな胸のなかでレースカーテンで隔たれる連れ去るように生れ落ちる半月は泡と香りと湯気となりこの階だ…

これを犯したのは、だれなのか

深夜零時半、ひとりの少女が、人けのない路肩を歩いている。 この少女は、何を考えているのか。 その顔は、何かに怯えているようにも見える。 その顔は、何かを待ち望んでいるようにも見える。 ほんの一瞬、目を離した隙に、少女が味わったものを。 それは目…

肉塊

俺はこの先も、人間を愛するだろう。 愛するほど、その者を殺したくなるだろう。 俺は目に見える。 正面に美しい君がいてその顏面にショットガンの銃口を突きつける。 真っ赤な蓮の花のように散らばる肉片、醜い肉の塊。 それが君のすべてであるし俺のすべて…

灰の馬

そこには神が燃えていた。 だがよく見ると、それは街であった。 暗黒の夜に静かに、街が燃えていた。 煌々と燃え盛る炎のなかで、馬の嘶く声が聴こえていた。 馬は蒼褪め、死者のような色をして街の広場で燃えていた。 傍には涸れたみずうみがあった。 この…

エリヤの火

右の手にはイエス、左の手には洗礼者ヨハネが立つ。どちらが本物の救世主、エリヤだと想う?天はかしら。爪先は温泉に浸かっている。腹には死が宿っている。彼女が産むのは誰なのか。産みの聖母よ、貴女は誰の子を産むつもりか。子宮のような洞窟で、男が詩…

nostalgia

男は洞窟のなかで酒の入ったカップを手に、一人の幼い少女に話し掛ける。季節は真冬だというのに足は脛まで水に浸かりながら。 聴いてくれ。一人の愚かな男が、たった一つの救いをそこに見つける。なんだと想う?男は見つけたんだ。やっとそれを。泥沼のなか…

ノスタルジア

男は微笑み、そこに見える幼い少女に向かって話し掛ける。面白い話をしてあげよう。独りの死に至る病の男が、或る夜、 酒に酔って泥沼のなかにはまってその底で眠ってしまう。すると一人の孤独な悲しい女がその男を見つけ、助けようとする。沼の岸辺で力尽き…