2016-01-01から1年間の記事一覧

ѦとСноw Wхите 第7話 〈記憶〉

夕方まで眠ってしまった。Ѧ(ユス、ぼく)はСноw Wхите(スノーホワイト)を見つめながら昨日書いたことを想いだし、とつぜんなみだをながしてСноw Wхитеに言った。 Ѧ「Ѧのお父さんは、Ѧを忘れてしまったのだろうか。死んでしまうこととは、すべてを忘れてし…

祝福

今日であなたが死んで十三年が過ぎました。 お父さん。わたしは死ぬまで苦しみたいのです。わたしがあなたを死なせてしまったことを死ぬまで苦しんで悲しんでいたいのです。だからどうか、わたしの苦しみを悲しまないでください。わたしは自分でそう選んだの…

ベンジャミンと先生 「カシス海」

さあ今日は、いい天気だな。曇ってるけどな。あたたかい日だ。この昼下がりのこの眩い空、ひじょうに微睡みたいよ、先生はな。 では今日は、ベルギー最大の幻想文学作家ジャン・レーのギリシャ世界の古代神を現代に甦らせた、愛と復讐の壮大なドラマとちまた…

ѦとСноw Wхите 第6話 〈イエス〉

イェスワは言った。 「求めつづけなさい。そうすれば、あたえられる」 「探しつづけなさい。そうすれば、見いだせる」 「叩きつづけなさい。そうすれば、ひらかれる」 「だれでも求めつづける者は受け,探しつづける者は見いだし,まただれでもたたきつづけ…

ѦとСноw Wхите 第5話 〈願いと恐れ〉

Ѧ「”引き寄せの法則”というお話はѦ(ユス、ぼく)とっても好きだけれど、その中にもやっぱり引っかかるものがあるんだ。それは無意識で引き寄せることが惰性によって引き寄せているというところ。Ѧはとってもポジティブな考え方の中に、どうしてそのようなネ…

ѦとСноw Wхите 第4話 〈魂〉

Ѧ(ユス、ぼく)が何日か振りにベランダのプランターにお水をやると、レモングラスの草の下に小さなアオムシが寝っころがっていた。きっとさっき枯れかけた草を引っこ抜こうとして引っ張ったときに下に落っこちたのかもしれない。引っこ抜くのはやめておいた…

ѦとСноw Wхите 第3話 〈夢〉

そういえば、ぼくの憶えていない夢はどこに存在しているのだろうか。 Ѧ(ユス、ぼく)はそんなことを目がさめてComforter(カンファダー、掛けぶとん)に包まれながらふと思った。 Сноw Wхите「Ѧが夢を見た瞬間、それは存在するのです」 Ѧ「Сноw Wхите(スノ…

インダとガラメ  番外編 「不自由」

何かに怯えている。何かに。怯えて恐れ縮むどころか膨らみすぎて熱くなっているよ。怯えているのに。何かに。熱くて止まらないものがある。 ここに親に捨てられた子供インダと親を殺した子供ガラメがいる。さて、今回はどうしたらこの子供は自分を肯定し得る…

ѦとСноw Wхите 第2話  〈食べ物〉 〈光と闇〉

Ѧ(ユス、ぼく)が夢の中で朝起きると、Сноw Wхите(スノーホワイト)はお庭の菜園でѦの食べる植物をせっせと収穫していた。 ѦはСноw Wхитеに「мум(マム)」と言って抱きつくとСноw Wхитеの身体は汗ばんでいた。 今日は風が冷たい。 Ѧは、毎日Ѧのためにこう…

ѦとСноw Wхите

お題「監視」 「私たちは、必ず誰かに監視されています。私たちが監視されない方法は、今のところないのです」 Ѧ(ユス、ぼく)に向かってСноw Wхите(スノーホワイト)はそう言った。 Ѧ「ѦはСноw Wхитеにだけ監視されていたい」 Сноw Wхите「では今日からѦ…

告発者 第二章

元アメリカ国家安全保障局(NSA)局員 ギー・スタッグス 36歳 「私は第二のエドワード・スノーデンとなるべく、膨大な数のNSA及びCIAの機密文書をこのメールに添付しました。スノーデンのリークした文書とかぶる物は多くあるかもしれませんが、私なりに選び取…

告発者

「ほんとうに、馬鹿げてると思う。あなたのやったこと。わたしは」 愛するがゆえに、まるでこの疑いは底を失った海なのです。暗黒の。わたしは愛するエドワード・スノーデンとの心と心、魂と魂、霊性と霊性の対話を行った。その記録を此処に残す。 「率直に…

ベンジャミンと先生 「擬態」

今日は学校はお休み。 先生のおうちにベンジャミンは昼前にやってきました。 ピンポーン。 先生がドアを開けるとベンジャミンがいつもの屁を少し我慢しているような顔で突っ立っている。 「お、ベンジャミンか、なんの用だ」先生があくびをしながらそう言う…