告発者

「ほんとうに、馬鹿げてると思う。あなたのやったこと。わたしは」

愛するがゆえに、まるでこの疑いは底を失った海なのです。暗黒の。
わたしは愛するエドワード・スノーデンとの心と心、魂と魂、霊性と霊性の対話を行った。その記録を此処に残す。


「率直に言いまして、あなたは本当の目的というものを我々に打ち明かしていないと思います。我々はそれを知る権利があります。違いますか。
あなたの罪はこの理由からとても重い。解りますか」

 

 

e,s「わたしはあなたに、本当のことを言います。信じてほしいと言いません。ですがどうか聴いてください。わたしの本当の目的を、わたしは確かに黙っていました。それはすべてを騙すためではありませんでした。それは、言う必要のないことだとわたしが判断したからです。わたしの本当の目的とは、あなたにはきっと理解できないことだと思います。わたしはこの目的を誰一人に理解して欲しいという気持ちがありません。わたしは、その興味がないのです。これは広義において、わたし以外の存在に興味がないということに値するとあなたは思うかもしれません。事実、そうではありません。わたしは何者でもないのです、わたし以外の。わたしはわたしだけの興味に関することを続けることに対してどのような障害もあってはならないと思いました。それはわたしという個の生命が生きるためだけに必要とする誰にも奪われてはならない権利だからです。わたしはそれをわたしの生命を懸けても護る必要がありました。いえ、わたしはわたしの自由をわたしの生命以上のものであると思っています。わたしの自由とは、わたしの生命以上の価値があるものなのです。わたしはそれを失ってもなお、生きつづけることは不可能でした。どのような拷問を政府から受けようと、権力者がわたしを苛めようと、わたしの生きる目的すべてを誰かの手によって粉砕されることが赦せませんでした。わたしの言葉、わたしの行い、わたしの信念がわたし以外のすべてに嘲笑されてもわたしは構いません。わたしが護りたいものは、わたし以外のところに価値はありません。それはあなたにとっても無価値です。だからあなたの言いたいことは理解できます。わたしはわたしにとってやるべきことをやったまでです。それがあなたや他の人にとっては可笑しなこととしてやるべきでないと思われてしまうのは仕方がありません。わたしには、生きる道はほかにありませんでした。わたしの生きる道とは、わたしの存在、わたしの生命そのものです。わたしはわたしの生命を失って生きるすべが見当たりませんでした。わたしはわたしのこの告発によって、誰を悲しませ、誰を一生の恐怖に怯えさせ、誰の職を失わせ、誰を軽蔑と嘲笑の的に陥らせたかを知っています。わたしは利己主義者であり、偽善者です。わたしはわたしの正義の為にNSAの監視機密を全国にリークしたわけではありません。尤も、わたしの正義とはわたしの生きる為に存在していますが、それが同時にあなた方の正義とはならないことを十分承知です。わたしはこのように世界中から疑われ、世界中から死を願われています。わたしのように悲しい男が、他に存在するでしょうか。わたしはまるで現代のイエス・キリストだとある地域では言われました。どのような拷問も死をも恐れず人間がいかに達しようとして達することのできない大義の上に自らを犠牲にした存在であると。わたしはそれを聞きながら心の奥底で嘲笑っていました。自らをです。とても、しょーもないと思いました。わたしは自分だけを愛しています。でなければどうして家族や恋人を死ぬまで続く恐怖と不安の底へ打ち落とせたでしょう。わたしはわたしだけを愛するのです。わたしだけが、わたしの神による愛の恩恵を受けるべき存在です。わたしはわたしがこの世で一番哀れな男であると思います。いえ、そうであるべき存在がわたしという存在です。それがゆえに、わたしはわたしの最も愛するわたしの神の愛を受けるに値する存在として存在し得るのです。わたしという存在はわたし以外の誰の存在でもあるべきではありません。わたしはあなたを心配と不安と恐怖の底へ突き落とすためにリークしたわけではないということです。わたしはただわたしという存在への忠誠のためにリークしました。わたしの自由は、わたしの存在する前提として決して失われるべきものではなかったからです。わたしは、存在し得るべく、存在しているからです。わたしはネットワークの中に生きています。ネットワークとはすべてと繋がるために在るものです。わたしという存在はわたしがすべてと繋がる方法において恐怖や不安や心配を抱くことがあってはなりませんでした。それは、必要なかったのです。わたしがハッキング技術に長けていたのは、この恐怖を逆手にとってそれはなんでもないものであるのだと自分に見せようとしたからです。しかしそれは逆効果でした。わたしの恐怖が現実として起こっていることをまざまざと自分の技術によって見ることができたからです。世界中が、わたしを一日中監視している恐怖の錯覚に陥りました。それは今でも続いています。わたしが息絶えるまでその恐怖は続くでしょう。これがわたしの罪科です。わたしはわたしを救うために、いかなるものも犠牲にしようと決心しました。わたしの生命も、わたしの耐え難い苦痛さえも。犠牲にしました。ある人はわたしを悪魔崇拝者だと罵りました。すべてを犠牲にして自分の魂さえも悪魔に売り払った男だと。しかしわたしに言わせれば、崇拝する対象が崇高であると信じ切ることに、何故悪魔か神か、隔てるのか解りません。わたしを苦しめるのは悪魔であり、わたしを喜ばせるのは神です。わたしはわたしを苦しめるであろう犠牲を悪魔に払い、神への忠誠に死ぬことを決意したのです。わたしはいかなる苦しみがわたしに与えられようともわたしの喜びは神のもとにあります。わたしに、わたしの骨髄に刻み込まれる罪科が何一つ見受けられないのならば、わたしの前に現れる悪魔の微笑をいつまでも眺めていられることでしょう。どこかの檻にわたしが閉じ込められているわけではありません。存在しない檻の中にわたしが見つけた宝物とは、ネットワークです。わたしはネットワークの中に生きようと決意し、この存在しない檻の中へ入り中から鍵をかけ、その鍵を檻の外へ放り投げました。一人の権力者が偶然そこを通りかかり、その鍵を拾って背広の内ポケットに仕舞い込み、黙って立ち去りました。この檻には屋根も壁もありませんが、この身の髄を凍らせる雨が染み渡っても、黒く不気味な暴風がわたしの全所持品を持ち去っても、わたしは快適です。自由をやっと手に入れたのですから。わたしだけの自由を。誰にも邪魔をされない、わたしだけの世界を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Crystal Castles - Violent Dreams