Can I Call You Tonight?

18歳の彼は受話器を手に取り、”向こう側”にいる相手に向かって言った。

「ねえ、ぼくは近くに感じている。ぼくは今、此処にいるけれども、ぼくはぼくの行方を知らないんだ。ぼくの知っているぼくじゃないよね。ぼくは天国という場所をいつも夢想していた。そしてぼくは見つけた。実にさっぱりとした場所さ。だれもいないんだ…。でもぼくは知ってるんだ。ぼくはぼくに再会する道を、ただただひたすらに独りで歩いてゆくんだってことを。だからぼくの心はとても興奮していて、わくわくドキドキしている。ずっとずっと真っ直ぐに歩いてゆくんだけどさ、公衆電話を見つけて、ふとぼくはきみを想い出したんだ。電話をかけても、きみは出なかったから、ぼくは伝言メッセージを伝えた(録音した)。『Can I Call You Tonight?(
今夜、君に電話してもいいかい?)』って。そう…言ってから気づいたんだ。此処は、夜がいつ来るんだろう?何処まで歩いても、美しく、寂しげな縹色の空がつづいているんだ。ぼくはきみに会う為に、きみだけに再会する為に、この道を歩いてゆく。そしてぼくはすこしずつ懐いだしてゆく。ぼくの経験してきたすべては、ぼくがぼくを知る為に必要なことで、必然なことだったんだって。苦しくてたまらなくて、自分を殺そうとしたことが何度もあったし、実際にぼくは、ぼくを何度も殺してしまった。ぼくは存在していることに堪えられなかったし、存在自体が虚しかった。ずっと探していたんだよ。ぼくはきみを。きみがいないと感じてた。ぼくを嫌って、ぼくは拒まれて、きみから忘れ去られてしまったんだと想っていた。ぼくは本当(Real)のことだけが知りたかった。Cause I wouldn't know.〈原因を知らないから〉。天国は知ってるんだ。きみのいるところさ。ぼくはまだ、はっきりとそれを話すだけの時間が在る。でもぼくは外へ向かう力とファンをonにすることができない。どうやらぼくという”諸分子から構成された一種の精巧な機械(インテリジェント・デザインの産物)”は電源が切れてしまってるみたいだ。どうかぼくに言ってほしい。すべての存在は還元不能に複雑なマントラによって創造されたのだとね。ねえ今夜、きみを呼んでもいい?ぼくは決心する為にぼくの心を補おうとしている。ぼくにはきみの音声が電話から聴こえる。ぼくは最早、孤独(独りきりであること)を喪失しそうなんだ。ねえ、どうかぼくが感じるように、何がこれ以上本物かについて、教えてくれないかい?」


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(申し訳ございませんが、この番号は現在使われておりません。)
(この録音に間違いがあると思われる場合は、番号をお確かめの上、再度おかけ直しください。)


「ねえ、きみはもう本当に行ってしまうのかい?そう…ぼくはきみを手放さなければならないと想う。でも…本当に行くのかい?ねえ、行かないで、行かないでよ…。ぼくがだれだか、わかってるだろう?きみは、ぼくの未来だ。天国に向かう雲の上の道を歩きながら、これ以上の現実(Real)を見つけに行こうとしている。でもきみは、その道の途中で公衆電話を見つけて電話に出るんだ。そしてきみはぼくに言ったんだ。」


『So can I call you tonight?(それで今夜、きみに電話してもいいかい?)』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Dayglow - Can I Call You Tonight? (Official Video)