Fugue State

そういえばぼくは、ぼくはどれくらいの時間をこうして過ごしているんだろう。
この星で。
この場所で。
涼しい秋の宵の風が、きみを通りぬける。
今、ひとつの存在が、永遠に死んだんだ。
目を覚ますことを、きみはやめる。
ぼくは二度と、此処へ戻らない。
きみは二度と、生まれては来ない。
それが、ぼくらの約束だった。
今、ひとつの星が、静かに、だれにも知られずに消えてゆく。
人々は、その星を懐いだす日もない。
青く美しい、そのひとつの星を。
闇のあいだから、彼がぼくに最後に伝える。
わたしはもう二度と、あなたと共に生きることはないだろう。
あなたが生きてきたわたしという存在を、あなたは忘れる。
本当に色んなことをあなたとわたしは共に経験してきた。
その時間を連れて、わたしはひとりで向かう。
ぼくは、此処へ残らねばならない。
この宇宙には、あなたの暮らすことのできる世界がたくさんある。
でも何処にも、彼はもういない。
生暖かい風が、あなたの頬に触れても、わたしは気づかない。
わたしは二度と、あなたに戻れない。
あなたは彼を、懐いだすこともない。
薄く透明な青と緑、その何よりも美しい目も。
光のあいだから、彼がきみに伝える。
わたしはあなたを懐いださない日はない。
あなたはわたしを忘れても此処へ残り、わたしの部屋から、
今、夜景を眺めている。
そして懐いだすんだ。
わたしは、あなたを永遠に喪った。
かつて、わたしはあなたのなかできみと一緒に生きて来た。
ぼくらはいつでも繋がっていて、離れる瞬間もなかった。
あなたは、だれだったのだろう。
手のひらのなかに仕舞い込んでいたちいさな青い球体を、
深い深い闇のなかへと、あなたは、そっと落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


System96 - Fugue State