僕らはついに遣ってしまったんだ。
何を?
見境なく、あの、史上最高の未確認飛行物体を、撃ち落としてやったのさ。
メラメラ燃えて、眩しかったぜ、アイツ。
藁にもすがる思いで這いずってきやがって、しこたまこちとらBackdrop決めて彼奴は。
どうした?
死んだよ。
お前、まさか、死んだのか。
死ぬことないだろうに。
お前が遣ったんだろ。
僕らはついに遣ってしまったんだ。
何を?
昨夜むくんでた足を切り落としてやったんだ。
誰の?
俺の。
俺の足は踊って言った。
『もうじき春だなあ。』
俺は言ってやった。
「お前、頭可笑しいんじゃねえのお?」
あいつは楽しげに笑いながら海の方へ走ってって、そのうち、見えなくなった。
俺は遣ってしまった。と想った。
俺の足だからなぁ。
代わりに、葦を足にしたんだが、
どうした?
いや、へなへなで、これじゃあ蛭児だ。
俺ァ蛭児だ。
僕らは遣ってしまったんだ。
あの夜。ただ遊べる金が欲しかったんだ。
たった七日間、僕らは遊んで暮らす金が欲しかった。
あの嵐の晩、強盗に入った団子屋の親父がまさかの、マフィアのボスだった。
僕ら三人、全員、手と足の指を一本一本ずつ、見沢知廉みたいに、小さな小さなナイフでゆっくりゆっくりと削るように切り落とせ。そう顳かみに銃口を突き付けられて言われたんだぁ。
嗚呼、絶体絶命の週末。目の前の壁に何故か”力饂飩”っていう掛け軸が掛かってた。
意味がわかんねえなあ。俺はそう想いながら、手指と趾二十本、痛みこそ最高の快楽だと己に言い聴かせながら脱糞しそうな想いで切り落としてやったんだ。
こんなことになるならさ、俺は仏陀を目指して頭丸めて出家するべきだったよ。
今からでも遅くない。
そう、俺は、俺達は、今からでも遅くはないさ。
指はもうねえけどなあ。
愛しいあの娘の酒で荒れた紅い頬を、俺の、長く細い指で撫でるのが好きだった。
彼女は俺に言ってくれたんだ。
貴方のなかで何よりも、手の指が美しいと。
その指で、彼女の好きそうな音楽を作ったり、彼女に愛の手紙を書いたり、そう…
俺が燥いで飛ばして事故った車の助手席で死んだ彼女の骨も、俺は拾ったよ。
凄く、熱かったけど。
嬉しかったのかなあ…。彼女。あん時。
Scattle - Selfish Greedy Misery