One Counselor's Remorse —ひとりのカウンセラーの悔恨—

Yuza「前回、あなたが最後にお話ししたのは『何か大きなことをしなければならない。』とか…『自分には、その義務がある。』という強迫観念を今のあなたが抱えていると同時に、でも自分は『それに応えることはできるか。』とか、『応えたくない。』という感情があなたのなかで起きているということでしたね。」

 

Wes「Yes.(うん。)」

 

Yuza「『どうして僕が…?』という気持ちもあると言っていましたね。…それで、自分に、あなたにそのような感情が起きるのは、『何がそうさせるのだろう。』という問いと共に、あなたはそれを、その『大きなこと』を実行しない為に、『リミット(限界)』を持たなければならない。という想いにも今あなたは苦しんでいて、あなたはそこに『境界線』が必要であると感じている。何故なら、リミットを設けなければ、『何か悪いことが起きる。どこか悪い方向へと行くかもしれない。』とあなたは感じているから…。というお話でした。」

 

Wes「Yeah.(うん。)でも僕は、『絶対的なことをしたい。』と今、願っているんだ。」

 

Yuza「それは先週にお話ししてから、そのあとに起きた感情ですか?」

 

Wes「Yeah. そして実際、僕の人生にとってとても大きなことをしなければ、…僕はもうこの先、生きてゆけるような気がしていないんだ。」

 

Yuza「この一週間に、あなたのなかに起きたことについて、お話して貰えますか?」

 

Wes「…《12秒沈黙》僕は、三日前に、自殺しようと思ったんだ。…でも、それをしないことに決めた。代わりに…僕の限界を試すことに決めたんだ。」

 

Yuza「…。お父さんか、もしくはRD(セックス関係にある既婚女性)と、何かあったのでしょうか…?」

 

Wes「…。特に…。彼女とは、もう別れることにしたんだ。彼女は夫と別れるとずっと言いつづけながら、別れる気はどうやらないみたいだし…。」

 

Yuza「あなたは『自分を護る必要がある。』と言っていました。その為に、別れる決心をしたのでしょうか?」

 

Wes「…。もう、そういったことは考えていない。僕は寧ろ、護る必要性のあるものなど、何もないんだとわかったんだ。」

 

Yuza「…。何故、そのような変化があなたのなかに起きたのでしょうか…?」

 

Wes「…僕は、最初から何も持ってなどいなかったことにようやく気づいたんだ。そして僕は実際、本当に何も求められてはいないし、この世界に対しても、僕は何も提供しては来れなかった。」

 

Yuza「あなたは『何かを求められたいわけではない。』と言っていました。でもやっぱり何かを求めていて…そして求めても何も求められないんだということに気づいたということでしょうか。」

 

Wes「《18秒沈黙》…僕はもう自分の後ろに隠れることが嫌になったんだと思う。」

 

Yuza「それは自分自身の…強く理想的な自分のイメージとする盾のようなものの後ろに隠れる感じのイメージでしょうか…?」

 

Wes「(首を横に振る)…わからない。ただ僕は…とても遠くまで冒険しに行きたくなった。もうここにいることに、僕は堪えられるような気がしないんだ…。」

 

Yuza「…。具体的に、この一週間の間にどのようなことがあなたの感情のなかに起きたのかを、教えて貰えませんか…?」

 

Wes「…僕のなかに閃いたというよりか…ずっと奥の方で温まっていたものがやっと形となって来て、…それで僕の外に、それは出て、…凍えている…。僕は、ある種のとてもでっかい、ほとんどの人にはできっこないような凄いボランティアを独りでしなければならないんだ。そしてそのすべてに僕は全責任を負わなくてはならないし、それは僕のなかに、僕の今の世界に起きている僕に対する絶対的な義務であると感じている。」

 

Yuza「…それはまるで…どこか、とても深い苦痛を伴う一種の《自己犠牲》というものであるかのように感じますが…。そのようなイメージでしょうか…?」

 

Wes「…。よくわからない…。ただ僕は…その境界線をなくし、僕にその権利を与えられて、激しく要求されていると感じる。」

 

Yuza「だれからそれを要求されているのでしょうか…?」

 

Wes「…ほかのだれでもない、僕自身…。」

 

Yuza「…。あなたはあなたのなかに、色んな『人格』が存在していると言っていました。そのすべての人格のあなたが、それについて同意しているのでしょうか?」

 

Wes「《58秒沈黙》…。僕のすべては…僕がそれを行うことができると思う。僕には今、限界がないと信じていて、僕はそのすべてを行うことができると思っている。」

 

Yuza「…あなたのなかにはとても寛大で、合理的で、自分自身に対するとても深い自責の感情を持つあなた、それを自分に対して求めているあなたがいますよね。…あなたが今、仰っていることが、どこか…何か破壊的な要素を持つようなことに想えてしまうのですが…それを…実行することが、本当にあなたのなかで素敵なことであるのでしょうか…?」

 

Wes「…僕はそれを、みんなから頼まれていると感じている。僕自身も、それこそが、遣りたいことなんだ。」

 

Yuza「『みんな』とは、だれのことでしょう…?」

 

Wes「…All.(すべて。)」

 

Yuza「今、あなたのなかに、そのことを実行することについて、動揺しているあなたは本当にいないのでしょうか?」

 

Wes「(首を横に振る)」

 

Yuza「…今、あなたは、それを実行しようとしている。今あなたは、安心していますか?」

 

Wes「…。僕は、『安心』というものを求めたことはないし、それが必要であると感じたことはない。」

 

Yuza「…でもあなたは…U(4歳の男の子)が自分の膝に乗っかってきたとき、『あたたかさ』を感じて、そしてその温かい感触によって心地良さを覚え、そしてあなたはそのとき…勃起したと言っていましたよね…。それは『安心』の感覚ではなかったのでしょうか…?」

 

Wes「《長い沈黙—1分10秒》……。わからないけど…僕はもうそれでは満足はできないということがわかって、それで…きっとそれ以上のものを今は求めているんだと思う…。」

 

Yuza「…想うのですが…『それ』は、本当に、あなたの"力量"以内のことなのでしょうか…?何か、取り返しのつかないことが起き、そしてあなたは、そのことをあとで後悔しないでしょうか?」

 

Wes「…どうなるかは、僕にもわからない…。でも僕は、今、ここから飛び出さなくてはならないんだ。もう、頼まれたことだけを遣りつづける日々には戻るつもりもないし、また同じようなことになって、自分と、相手に対して嫌気が差すのも、もう嫌なんだ。…僕はもっと…自分をストレートに表現してゆくことに決めたんだ。」

 

Yuza「あなたは自分が、あなたの母親そっくりの、《従属的生き方》をしてしまっていることに対し、自分自身に『怒り』を感じていると仰っていましたね。」

 

Wes「Yeah.(そう。)」

 

Yuza「あなたはお母さんのことを『何も知らないんだ。』と言っていましたが、お母さんに対する気持ちの変化など、何かありましたか…?」

 

Wes「(首を横に振る)」

 

Yuza「あなたは御両親のどちらにも好きというような感情を持っていないが、どちらかと言うなら、お父さんの方が好きだと言っていたことには変わりはありませんか?」

 

Wes「《53秒沈黙》……。」

 

Yuza「…あなたは幼い女の子を含む《女性全般》に対し、《脅迫されている》という感覚があり、同時に、年齢問わず、『女性(女の子)に対して、自分に本当に酷いことができるとは思えない。』と言っていました。そのことについても変化はありませんか?」

 

Wes「…。今はその境界線を取っ払えるように感じているんだ…。」

 

Yuza「…それはつまり…女の子に対しても、男の子に対するのと同じようにレイプ願望や、殺害願望が芽生えるようになってきたということでしょうか…?」

 

Wes「《長い沈黙—2分11秒》………。」

 

Yuza「あなたが、女の子よりも、男の子を好むのは、あなたのなかにある《母親に対する失望や同族嫌悪的な感情》が関係しているのではないかと前にわたしはあなたに言いました。あなたは自分が、男性よりも、女性的であって、そして母親と自分が似ていることを自覚しています。この感覚にも変化はありませんか?」

 

Wes「…。今は…、よくわからない。mom(母)はいつもdad(父)に対してずっと従属的ではあったけど、でも実際に優勢であったのは、momの方なんだ。」

 

Yuza「あなたが15歳のときに離婚するとなって、そのときにあなたのお父さんは自殺未遂をしていますね。依存して、寄り掛かっていたのはお父さんの方であって、実際に支配的な力のあったのはお母さんの方だということでしょうか?」

 

Wes「(頷く)」

 

Yuza「つまり…こういうことでしょうか。実はあなたが、本当に嫌悪的感情を抱いているのは、従属的で、女性的であったお母さんに対してではなく、ある意味、お父さんに対してとても支配的な立場にあり、隷属的存在のようにお父さんを陰で支配しているかのようだったお母さんの一面に対して、ということなのでしょうか…?」

 

Wes「《39秒沈黙》…。僕は多分…dadの気持ちはいくらかは理解しているが、momの気持ちは一切…何も理解できるものはないんだと思う。」

 

Yuza「…それはあなた自身が《男性》であるからなのでしょうか…?」

 

Wes「…わからない。」

 

Yuza「…あなたのお母さんから、もうお父さんを許せないとなって…そしてお母さんからお父さんに離婚を言い渡しましたよね…。そしてその、《離婚》という重大で決定的な方法があなたをずっとずっと、潜在的に苦しめつづけてきたであろうとわたしは感じているのですが…あなたが、今、考えている、《重大で絶対的な大きなこと》を、もしも、この先に、あなたが実行に移したとき、あなたは心の底で、もっと別の方法で解決する方法を見つけようとしなかったあなた自身を責めつづけることはないでしょうか…?」

 

Wes「《長い沈黙—2分17秒》………。」

 

Yuza「あなたは、お父さんに対してもお母さんに対しても、根本的な深い恨みを持っていて、『何故、彼らは、他の方法で解決してくれなかったのか、何故、自分(子ども)たちがいるのに《離婚》や、《自殺》といった利己的決断をしたのか。』とずっと自問してきたように感じます。…一言で言えば、『何故、彼らは僕たちを苦しめる決断をしたのか?』という怒りなのではないでしょうか?」

 

Wes「…。よくわからない…。とにかく僕たちみんな、両親の毎日の口論に巻き込まれていたし、酷い日々だった。ただ…弟妹がいるなかで、僕だけが子どもたちに性器を曝すという"対処法"を取ったんだ。」

 

Yuza「あなたが性器を子どもたちに露出し始めたのは御両親が口論し始めた時期の13歳のときからで、そしてあなたの15歳の誕生日に、『僕たちは離婚する。』のだとお父さんから告げられ、そしてお母さんとの口論のあと、その日にお父さんは自殺未遂をしましたね…。そのとき、あなたのなかで…何かが完全に、崩壊したかのような感覚にあったのでしょうか…?」

 

Wes「…《18秒沈黙》彼らは…もう永久に僕らの元には戻らないだろうということを、その日に僕は感じたかもしれない。それは…どこかホッとする感覚であったけど、とても恐ろしい感覚でもあったんだ。僕たち子どもたち以上に、両親の方が混乱していたよ。それを観て、それが《大人という生物》で、《僕たちの未来》であるんだと感じて、何も信じられなくなったのかもしれない…。」

 

Yuza「両親に対する深い怒りと悲しみ、そして不安と彼らの無責任感に対する絶望や嫌悪が入り混じって、それであなたは永久に、自分のなかの《純真な子ども》を喪失してしまったかのような気持ちになったのでしょうか…。」

 

Wes「…。僕たちはどうしてこんなにも彼らのために我慢しなければならないのかと感じていたかもしれない。」

 

Yuza「お父さんもお母さんも、その決定的なことが起きる前に、限界(limit)を互いに設けて、常に不満を小出しにして話し合っていたなら、そんなことにはならなかったんじゃないかという疑問があなたのなかにあった…。」

 

Wes「(頷く)Yes.」

 

Yuza「あなたは、御両親が離婚し、別々に生きて行くことになったことに、本当は未だにあなたのなかで《大混乱》が続いていて、そしてその凄まじい混乱のなかで、自分自身に対する同じひどい混乱が続いていて、そのなかで最早、自分という存在に対してでさえ、《主導権》を握ることはできないのだという、これもひとつの強迫的な観念にあなたが襲われ続けているようにわたしには感じるのです…。」

 

Wes「…《30秒沈黙》僕自身、僕を理解できたことなんてないんだ…。」

 

Yuza「…あなたのなかで未だ、《最悪な事態》がずっと変わることなく続いている状態であるのだと想います。」

 

Wes「…。僕は彼らと良い関係を築きたいと思ったこともない…。面倒を見て貰ったという意識も僕のなかには存在しない。愛されたという感覚も一度もないし、本当にいい記憶が何一つないんだ。」

 

Yuza「あなたのお父さんは、あなたのそういった話を聴いて、あなたが『否定的なことしか憶えていない。』と言っていましたが…」

 

Wes「…《27秒沈黙》」

 

Yuza「もしかしたら、良いこともあったのかもしれない…でもあなたにとって、それを認めることが、認めないでいることよりもずっと恐ろしいことのように感じてしまうのです。」

 

Wes「…《9秒沈黙》」

 

Yuza「少なくともあなたは両親から感じ取ってきたものは《愛の不在》であって、愛のない言葉や愛のない要求ばかりであったということですね。」

 

Wes「(頷く)Yeah.」

 

Yuza「でもあなたは『自分にとっても他人にとっても、《愛》がなんであるのかわからない。』と言っていましたね。それでもあなたには《愛のイメージ》というものがあると…。今、すこし、そのイメージを言葉で表現することはできるでしょうか…。」

 

Wes「《15秒沈黙》……。それが…僕がこれから、遣ろうと思ってる『大きなこと』なんだ。」

 

Yuza「…本当にそうなのでしょうか…?何故なら…あなたは今…とても悲しい表情をしているようにわたしには感じてしまうのです…。」

 

Wes「…。あなたのその感覚は…正しく認識されて、僕の顔を通して反映されているだろうか?」

 

Yuza「…。わたしの今のこの感覚は、わたしのなかで正しいと感じます。」

 

Wes「…でもそれは間違っている可能性だってあるんだと思う…。」

 

Yuza「あなたのなかのひとりのあなたが、あなたがこれから遣ろうとしていることを、本当は悲しんでいる…その可能性はないのでしょうか…。」

 

Wes「…。僕にとって、僕がそれに気づいてしまうことは…怖いことだと感じる。僕は、僕自身によって《本当のCare(ケア)》をしようとしていると思う。でも僕は僕を完全にコントロールすることによるケアは不可能なんだ。」

 

Yuza「ある意味…あなたは最もあなたにとって"億劫"なことをこれから遣ろうとしているように感じるのです。そして今のあなたは、あなた以外のすべてがあなたに対し求めていることのすべてに自分は応えられないのだという確信的な絶望的な気持ちから、それを行おうとしているようにわたしには感じられるのです。」

 

Wes「《18秒沈黙》…。僕は一人の子どもに性的虐待をすると、また別の形を要求した。別の形で痴漢し、さらに別の形を要求するんだ。そして、そのすべてに、僕は本当は満足できてなどいなかった。『満たされている』と上手く錯覚しようとしていただけだった。この《終わりのない要求》を終わらせられるんだと思う。」

 

Yuza「…飽くなき要求なのではなく…まるでそのことに飽きる為の要求であって、その要求の連鎖を終わらせたいと願っているのですね…。」

 

Wes「(深く頷く)」

 

Yuza「あなたは今、本当に…それを待っていたように感じられます。あなたは、それを見つけようとしていたのかもしれません。あなたは、子どもたちに性的虐待をしない期間が続くと、気が狂いそうな苦しみに襲われて来ました。あなたは…本当に肉体的にも、精神的にも、"自滅"するリスクのあることを、自分自身を消耗させつづけながら遣ってきたのだと想います。…でも、それでもなお…あなたは自分のしていることが好きだと言っていましたね。」

 

Wes「…。僕には…子どもたちを尊重するという意識がないんだ…。そしてそれを僕が持ったとき、僕は生きてゆく価値はないように感じる。僕は死なねばならないだろう…。」

 

Yuza「…あなたはあなた自身の欲求に対し、最も従順で、最も純粋であるのだと感じます。…まるで、今のあなたは、あなた以外のすべての要求に応えることを拒絶し、そしてそのことこそが、あなたのなかであなたが最後に"愛されるチャンス"であるかのように確信しているように感じられます。…あなたは今まで…色んな人の言いなりとなって生きてきました。睡眠時間を削ってでも任された仕事を独りでこなし、女性からは騙されて…不倫の関係を続けてきた…。しかしようやく、そんな言いなりの人間を、一体、だれが愛するのか?と気づいたかのように感じるのです。」

 

Wes「…。僕はいつも…完全で、完璧であろうとしてきたけれども…それは全能感というより、僕という存在の義務であるように感じているんだ。…僕は何に対しても、"リラックス"できたことがない。すべてを完璧にしようとしてきたけれど、何一つ、僕にはできなかったんだと…そう、僕はやっと気づいたのだと感じる。《8秒沈黙》…。僕が幼い頃に、それに気づいていたなら…僕はもっと…別のものを必要としていたのかもしれない…。もっと違った何か…あるいはだれかを必要としていたかもしれない。…僕に本当に必要なものは、もっと違うものだったのだろう。」

 

Yuza「…あなたは…自分のなかに沸き起こり続ける激しい欲求も、自分に関わる人たちから受ける寒々しい対応もすべて、自分一人で乗り越えなければならないと感じて来た…そして乗り越えてはきたけれど…ふと振り返ると、自分が本当に望んでいるものが何かもわからないし、感じて来た快楽も喜びも楽しいこともすべて、錯覚でそれがどれほど良いものであったのか、わからなくなった…。」

 

Wes「《20秒沈黙》…僕は初めて…"一人になりたい"という明確な欲求に気づいたのかもしれない。そして…唯一、その方法が何か、僕にはわかってしまったんだ…」

 

Yuza「…。つまり…今のあなたにとって、"それ"以外のことのすべて、《絶望的》なのだと…。」

 

Wes「《11秒沈黙》…。僕は初めて、自分に寄り掛かろうとしている。僕は自分を初めて本気で助けようとしているんだ。」

 

Yuza「…。つまりあなたは…"他者"と感じるものすべてから自分を完全に切り離して…そしてそのすべてと共有するものなど存在しない…それが不可能であると確信していること…それがあなたを真剣に救いだすことに目覚めたあなたのなかで、あなた自身から手を差し伸べられている状況に、今あるのだと…そういうことなのですね…?」

 

Wes「《28秒沈黙》…。僕は…この孤独感や不安感のなかを、"彼"と一緒にゆっくりと歩いてゆくことにしたんだ。」

 

Yuza「それが"あなた"であるのですね。」

 

Wes「(深く頷く)」

 

Yuza「…その道はあなたにとって、"peace of mind(心の安らぎ)"へと繋がる道なのでしょうか。」

 

Wes「…。僕のなかでは…楽観的に考えることは全く難しいことではないから…僕にとってそれはとても明るいんだ。」

 

Yuza「あなたのなかで本当の真っ暗闇へと向かう方向とは真逆の方角であるということですね。」

 

Wes「(頷く)Yeah.」

 

Yuza「…どこかあなたがとても《新しい死の観念》を見いだしたかのように感じますが、あなたは…"死"を今は考えていないのですよね…?」

 

Wes「僕はそれは絶対的に"生への方向"であり、"生に対する欲求"なんだ。」

 

Yuza「…今ある痛みや不安から、抜けだすためのものでもない…そういうことでしょうか…?」

 

Wes「《25秒沈黙》…。僕は今、痛みや不安から最も遠い場所にいる。」

 

Yuza「今のあなたは…痛みや不安を恐れるという気持ちもないということなのですね。」

 

Wes「Yes.」

 

Yuza「……。わたしは今…何故か、不安と心配でいっぱいです…。あなたに、"それ"が何かを訊ねることができなかったのは、わたしがそれに堪えられないように感じているからだと想います…。そしてもう…時間が来てしまいました…。わたしが臆病なカウンセラーだとあなたは想っているかもしれませんね…。でも…やはり、わたしは傷ついてでも、あなたが遣ろうとしていることを知りたいと願っています。…良ければ…あなたがこれから実行しようと考えていることを、わたしに教えて戴けませんか…?」

 

Wes「……。僕に、あなたに今言えることは、"それ"は、この世界で最も"最悪な事態"よりかは、ずっとマシなものであるということなんだ。"最悪な悲劇"を回避するために、必要なことなんだ。僕が遣らなくてはならないことなんだ。僕にはそれができる。他の多くの人々には…できないだろう…。…きっと、僕はそれを遣るためだけに生まれて来たんだと思う。僕の生きる価値はそれを遂行することだけにある。そしてこの世界は…素晴らしく飛躍するんだ。僕は…すべてから"許されている"ことをする。僕は"それ"をすることを許されている。何も…何一つ残らないより、マシなんだ。恐らく…本当に急がなければならないだろう…。僕は、貴女にお別れを言いに、ただ今日ここへ来たんだ。今日で最後だからね。残念だけれど、僕はもう貴女のカウンセリングは受けることはないだろう。それよりも…僕は聖書に、決して消すことのできないペンでたくさん落書きをしながら、真剣にこれから計画してゆく。"それ"を考えるだけで、僕のcock(ペニス)はとても硬くなるんだ。」

 

そう、輝く純真な眼で言ったのを最後に、彼は彼女のもとに姿を現すことはなかった。

その日のちょうど一週間後に、彼は最初の"それ"を実行した。

その約2ヶ月半後に彼は男の子を誘拐しようとして逮捕され、3人の幼い男の子を性的暴行後に殺害した罪を自白し、約3年後に、彼は望むがまま、処刑され、31年の生涯を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Westley Allan Dodd (July 3, 1961 - January 5, 1993) ウェストリー・アラン・ドッド (1961年7月3日 - 1993年1月5日)

彼女のなかに記憶された最後のWes

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


The Smile - Open The Floodgates

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この作品はロジャーズのカウンセリング(個人セラピー)の実際

Westley Allan Dodd(ウェストリー・アラン・ドッド)
を基に書いたものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Kozue & Wes's Story

Westley Allan Dodd (July 3, 1961 - January 5, 1993) </p>ウェストリー・アラン・ドッド (1961年7月3日 - 1993年1月5日)

Westley Allan Dodd (July 3, 1961 - January 5, 1993)
ウェストリー・アラン・ドッド (1961年7月3日 - 1993年1月5日)

 

 

 

 

ーLight of deathー死の光

天の父ヤーウェは、最初の人として、リリスLilith)という名の女を創造した。

リリスが地上で目覚めると側に一人の天使が座っていて、彼は彼女に向かって言った。

「愛しい我が娘、リリスよ。わたしはあなたを育てる為に天から降りて来て此処に来た。あなたはまだ幼く、多くの教えを必要とする者だからである。あなたはわたしのことを母と呼んでも良いし、父と呼んでも良いが、あなたの真の父の名はヤーウェであることを忘れないでください。わたしの名は、あなたが最初にわたしを呼んだ名にしよう。さあ好きなように、わたしを呼びなさい。」

幼い少女リリスは、あどけない微笑みを浮かべながら彼の美しい目を見つめて言った。

「ナァマ、ナァマ、ナァマ。」

彼は男神であったが、どうやらちいさなリリスは彼を母として認識したようだ。

彼は彼女に微笑み返すと、頷いて言った。

「今日からわたしの名はナァマである。わたしはあなたが成長するまで此処にいて、あなたを一人で育てる。あなたが成長する日まで、わたしはあなたの母となる。」

そう言うと彼はリリスを抱き上げ、膝の上に載せて身体を揺り篭のように揺らした。

リリスは嬉しそうに声を出して笑った。

この幸福な時間がこのエデンで、三十年ものあいだ続いた。

彼は悲しみを押し殺し、成長した彼女をひとり地上に残して天に帰った。

天でヤーウェは、彼女の為に、最初の人の男を創造した。

神はそれをアダム(Adam,土と血の意)と名付けた。

それは実際に、血を飲んだ土によってできたからである。

神が息吹を吹き込んだ瞬間、アダムは目覚め、側で自分を見つめ下ろすリリスに向かって言った。

「アァパ…。」

アダムの目は不安に揺れていて、リリスの彼を見つめる目は冷たかった。

そのとき、天から声が降りて来て、リリスに及んだ。

リリスは天の父に代わって、アダムに向かって言った。

「アダムよ。お前の名はアダム。最初に創られた人の男である。お前はわたし、リリスと同じ土と血によってできた。お前はまだ幼く、何も知らないが、やがてわたしとお前は夫婦となり、地に子孫を繁栄させることが父の望みである。」

そう冷ややかに言い捨てるとリリスはちっぽけなアダムの側を離れた。

ちいさなアダムは、言いようのない悲しみと寂しさを覚えて涙と鼻水を流した。

これを天から見ていた神は、夜の泉の淵で不貞腐れて佇んでいるリリスに向かって言った。

リリスよ。何故お前は生まれたばかりの自分のひとり息子を放ったらかしにしているのか。今すぐ行って、アダムを抱いてあげなさい。あなたは彼のたったひとりの母親なのだから。」

リリスはこれを聴いて、地に突っ伏して泣きながら言った。

「おお、わたしの愛する天の父よ。どうかわたしに母(ナァマ)を戻してください。わたしは彼なしで、此処で生きていたくありません。わたしは息子など欲しくなかったのです。わたしは愛するナァマさえいればそれで良いのです。」

天は黙し、彼女に返事をしなかった。

その夜、仕方無しにアダムに乳を与えながら眠っているリリスの夢のなかに神は降りて、彼女に言った。

「わたしの愛する娘、リリスよ。あなたに本当のことを話す。ナァマは、実は何処にも存在してはいない。彼はわたしが操っていた傀儡(くぐつ)であり、実体はわたしの霊であって、ほかの何者でもない。彼はまた、物質的存在ではない。あなたが感じて、触れていた彼のすべては幻である。だがこれをあなたがそのとおりに信じて、あなたが悲しみのなかに生きてゆくことをわたしは望んではいない。もし、悲しむばかりならば、この夢の記憶をあなたのなかからわたしは消し去る。だが、リリスよ、わたしはあなたを地に残して去らねばならなかったとき、どれほど悲しかったか。わたしは確かにあなたの父であり、また母なのである。人類の子孫を、この地に繁栄させることの目的と理由と意図は、あまりに複雑で、それはあなたに理解することはできない為、まだ話すときではない。」

そののち、リリスは自分の心を殺した。そうすることで、すべてに対して、といっても彼女にとっての”すべて”とは、天の父、神の存在であったが、リリスは神に対する最も良い報復の方法を知っていたからである。

真の暗黒が、彼女を包み、何より優しく抱いた。

その暗黒は、己を真の死へと至らしめるものであると彼女は知った。

或る夜のことである。神は最初の子、光を齎す者ルシエル(Lucifer)を地上に降ろした。

彼はリリスの暗黒の闇を壊(やぶ)り裂くと、光のなかで彼女を抱き、恍惚となって言った。

「わたしの愛する人リリスよ。わたしはあなたを妻にする為、天から降りて来た。あなたは最早、処女ではなくなった。光の子を無数に産み落とし、彼らのすべてを、あなたは支配するだろう。」

リリスは納得し、ルシエルを抱き返すと眩しい光のなかに彼女の闇は溶けてゆき、果たして彼女は、二度と戻らなかった。

即ち、このときリリスは、ルシエルに完全に侵食され、二人は真の一体となった。

天の父、神はこの存在を、サマエル(Samael)と呼んだ。

それは「わたし(神・EL)の毒(Sam)」という意味である。

サマエルは、両性具有の神(半神半人)であり、のちに人々は彼(彼女)をサタン(Satan)と呼んだ。

このとき、アダムはまだ幼かった。自分の母リリスに突如、男性器が生え、その風貌や身体が勇ましく、逞しくなったことに対しても、特に関心を示さなかった。

アダムは、母から愛されないことが関係してか、人として欠陥していたからである。

サマエルは、愛する可愛い我が子の下となって生きようと並々ならぬ努力をつづけた。

だがアダムは、何処までも欠失していて、幼稚であり、霊性があまりにも低かった。

とうとう、アダムが三十の歳になったとき、サマエルは自分が下になりつづけることに堪えられなくなり、彼のもとを去った。

天の父は、この哀れなアダムの為に、第二の妻を創造した。

アダムは、自分の肋骨から創られたこの幼い妻を、最初ハウヮ(Hawwa)と名付けたが、のちにこれを「ハッヴァ」と呼ぶようになった。

それは真に生きており、また呼吸していたからだった。

アダムは、自分の妻であり、また母であるリリスに捨て去られて自信を完全に喪失していたが、ハッヴァの愛らしさは彼を人として立ち戻らせ、真の幸福へと至らせるものだった。

アダムはハッヴァを我が娘として何よりも愛して育て、ハッヴァは成長しても彼を「アーム」と愛情を込めて呼び、父として愛した。

だが、ハッヴァが真に求めていたのは父でも夫でもなく、母であった。

神は天からハッヴァの寂しげな顔を見つめていた。

アダムもそれに気づいていたが、彼女の前で気付かない振りをした。

時は過ぎ、ハッヴァは女として十分に成熟する十六の歳になった。

天から朝の光線と共に声が降り、アダムのところに臨んだ。

「愛するわたしの被造物であるアダムよ。あなたの妻は真になにひとつ穢れることなく成長しました。あなたが母性を深め、無償の愛で彼女を愛しつづけたからである。だが今こそ、あなたは彼女と交わり、肉なる契を交して夫婦となるときである。その日こそ、この地で何よりも祝福される日となる。それはこれまでこの地に於いて、最も幸福な日となる。」

しかし七日間が過ぎても、アダムは彼女の身体に指一本触れることはなかった。

神は、二十二日間待った。だがハッヴァは相変わらず、処女のままであった。

神の悲しみの怒りは嵐と雷鳴となって彼に襲った。

アダムは圧し折れた樹にしがみついて天に向かって叫んだ。

「神よ…!どうかお許しください。わたしにはできません…!彼女はいまでもわたしに母を求めており、わたしに夫を求めてはいないからです。愛する天の父、彼女はまだ未熟で、心はまったく幼いのです。彼女と交わることは、わたしにはとうていできません…!」

すると神の声は稲妻のあとの轟きと同時に彼の処へ落ちてこう言った。

「アダムよ、黙りなさい。わたしはあなたの創造者である。あなたが何故、彼女と交わることができないか、わたしにはわかっている。あなたは恐れているからです。自分を棄てたリリスとハッヴァを重ね、同じことが起こることをあなたは恐れている。あなたはあまりにも弱い。その弱さが何処から来ているか、わたしが教えよう。それはあなたが今もあなたを許せないからです。あなたがあなた自身を受け容れることができないからです。あなたの申し開きを、わたしは聴きません。それは真実だからである。」

アダムの悲しみの何倍も神の悲しみはそれは深く、無限に拡がりつづけ、地上の植物はすべて枯れ果て、忽ちに地の全土は荒野と化した。

神はひとつのことを決心し、再びサマエルを天から地に降ろした。

その夜、ハッヴァはアダムと共に泣きつかれて、アダムの隣で眠っていた。

サマエルが其処へ近づくとハッヴァだけを抱き上げて少し歩いた場所にある泉の側に彼女を優しく下ろした。

ハッヴァは神の息吹と、アダムとリリスの血と肉と骨によって創られたものだった。

彼女の何よりも愛らしい寝顔を見つめながら、サマエルは静かに囁いた。

わたしはこのときを待っていた。わたしはなにものも恐れない者であることを、わたしに証明するこのときを。わたしは、全能者である。わたしはわたしに背くことを真の喜びのなかに行える者である。

そして彼は、自分の娘である彼女と肉なる交わりを通じて夫婦となり、のちにアダムを葡萄酒によって誘惑し、彼とも同時に肉の交わりを通して三位一体の(三者によるイニシエーションを行う)者となり、天の父なる神に対する最も罪深い反逆者と呼ばれるようになった。

だが神は、すべてを知っておられる。

神はサマエルを、「我が彷徨える悪意」と呼び、同時に彼を、

「(我が)死の光(Light of death)」と呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Arovane - Sicht

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Can I Call You Tonight?

18歳の彼は受話器を手に取り、”向こう側”にいる相手に向かって言った。

「ねえ、ぼくは近くに感じている。ぼくは今、此処にいるけれども、ぼくはぼくの行方を知らないんだ。ぼくの知っているぼくじゃないよね。ぼくは天国という場所をいつも夢想していた。そしてぼくは見つけた。実にさっぱりとした場所さ。だれもいないんだ…。でもぼくは知ってるんだ。ぼくはぼくに再会する道を、ただただひたすらに独りで歩いてゆくんだってことを。だからぼくの心はとても興奮していて、わくわくドキドキしている。ずっとずっと真っ直ぐに歩いてゆくんだけどさ、公衆電話を見つけて、ふとぼくはきみを想い出したんだ。電話をかけても、きみは出なかったから、ぼくは伝言メッセージを伝えた(録音した)。『Can I Call You Tonight?(
今夜、君に電話してもいいかい?)』って。そう…言ってから気づいたんだ。此処は、夜がいつ来るんだろう?何処まで歩いても、美しく、寂しげな縹色の空がつづいているんだ。ぼくはきみに会う為に、きみだけに再会する為に、この道を歩いてゆく。そしてぼくはすこしずつ懐いだしてゆく。ぼくの経験してきたすべては、ぼくがぼくを知る為に必要なことで、必然なことだったんだって。苦しくてたまらなくて、自分を殺そうとしたことが何度もあったし、実際にぼくは、ぼくを何度も殺してしまった。ぼくは存在していることに堪えられなかったし、存在自体が虚しかった。ずっと探していたんだよ。ぼくはきみを。きみがいないと感じてた。ぼくを嫌って、ぼくは拒まれて、きみから忘れ去られてしまったんだと想っていた。ぼくは本当(Real)のことだけが知りたかった。Cause I wouldn't know.〈原因を知らないから〉。天国は知ってるんだ。きみのいるところさ。ぼくはまだ、はっきりとそれを話すだけの時間が在る。でもぼくは外へ向かう力とファンをonにすることができない。どうやらぼくという”諸分子から構成された一種の精巧な機械(インテリジェント・デザインの産物)”は電源が切れてしまってるみたいだ。どうかぼくに言ってほしい。すべての存在は還元不能に複雑なマントラによって創造されたのだとね。ねえ今夜、きみを呼んでもいい?ぼくは決心する為にぼくの心を補おうとしている。ぼくにはきみの音声が電話から聴こえる。ぼくは最早、孤独(独りきりであること)を喪失しそうなんだ。ねえ、どうかぼくが感じるように、何がこれ以上本物かについて、教えてくれないかい?」


(We're sorry; you have reached a number that has been disconnected or is no longer in service)
(If you feel you have reached this recording in error please check the number and try your call again)
(申し訳ございませんが、この番号は現在使われておりません。)
(この録音に間違いがあると思われる場合は、番号をお確かめの上、再度おかけ直しください。)


「ねえ、きみはもう本当に行ってしまうのかい?そう…ぼくはきみを手放さなければならないと想う。でも…本当に行くのかい?ねえ、行かないで、行かないでよ…。ぼくがだれだか、わかってるだろう?きみは、ぼくの未来だ。天国に向かう雲の上の道を歩きながら、これ以上の現実(Real)を見つけに行こうとしている。でもきみは、その道の途中で公衆電話を見つけて電話に出るんだ。そしてきみはぼくに言ったんだ。」


『So can I call you tonight?(それで今夜、きみに電話してもいいかい?)』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Dayglow - Can I Call You Tonight? (Official Video)



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Exists or Exits

  ヨォ、久し振りじゃァねえか。
…嗚呼,なんだ、お前か。
久々に会ったってえのによぉ、そりゃネエゼ。
…それもそうだな。まあ座れよ。
言われなくとも俺は此処に座ろうと想ってたさ。
それにしても、久し振りだね。
オイオイ,お前なんだよ、そのツラ…いつにも増して…
人質に捕られたラタンの壺みてえな顔か。
そうよ…。
ハハ…それもそうさ。
何を操作した?
…ん?俺だよ…。
お前…大丈夫かよ。ところでお前、それ美味そうな奴、何飲んでんだ?
嗚呼,これか、これはブランデーとコーヒーと豆乳と沖縄の黒糖を混ぜたものさ。
お、そりゃ美味そうじゃねえかょ。一つ俺にも注文してくれよ。
良いぜ、俺が作ってやる。
なんだよこの店、客も店員もいねえのかよ。
ま、そうゆう御時世なんだろう、世も末だ。
なあお前、お前いってえいつから此処で独りで飲んでんだ?
…うん?知らんよそんなこと。おい、そんなことはどうだって良いじゃねえか。それより、お前コイツを飲め。
お、すまんね。
どうだ、イケるだろう。
お、コイツはまた、甘くてイケるじゃねえか。
HOTだろう。
HOTだ︎。☕
ははは、俺の魂はSuper freezingさ。
相当、身に沁みそうだな。まあ聴いてやろうじゃねえか、冥土の土産にもしてやろう。
なァ、オレ、おれは、聴いてくれ、俺は…。
だいじょぶか?
俺はさ、宇宙の無限性を信じている。宇宙ってやつは何処まで行こうが続いている。そんだけ広いならよ、どんなやつだろうが存在してても可笑しくねえってことなんだ。俺はあるとき考えたんだよ。例えばこういう奴がいたって、良いよなあ。
どんな奴だ?一生みずからの屁を空間に溜め込み続けて充満させていることに真の喜びを感じて自分の屁だけで呼吸して生きて行けるか命懸けで挑戦してる奴か?
そんな奴はいなくていいだろ。
じゃあどんな奴のことなんだい?
俺はこんな奴がいたら良いと想ったんだよ。40歳過ぎて独身で友人もいなくて、そいつは変わりもんだから、だれひとりにもまともに相手にされなくなって、でも若い女性アーティストに心底惚れ込んでしまうんだよ…それでひたすらに、そいつはすべてに対する情熱と悲しみを彼女に送り続けるんだ。それはそいつにとってとても切実なものだが、彼女には何も届かない。無反応で、読んでるかどうかもわからない。とうとう或日、彼女にブロック(受取拒否)されている(だろう)ことに気づくんだ。でもそれでも、そいつは長文の手紙を死ぬ迄、何十年と彼女に送り続け、彼女の発表する新しい作品を死にたくなるほどの悲しみのなかに鑑賞しては賛美し続けるんだ。そんな男が、この果てなき宇宙の何処かの、本当に目立たぬ処にいても良いな。ってね。
つまりそいつは自分の手紙が相手に届いてはいないだろうと知りながらも長ったらしくて未練たらたらな文章を書き綴って無反応の女に何十年も送り続けてるってわけか。
そうさ。
そいつ、ただのバカだろ?
バカはバカでも、❝ただの❞バカだとは想わねえな。
じゃあなんだ?❝完全なるバカ❞、〘パーフェクトバカ(Perfect Fool)〙か?
もっと凄いだろ。
どこがどう凄いってんだ?そいつ、他に遣ることねえだけなんじゃねえのか?
いや、それは違うさ。
どう違うってのさ。
そいつはさァ…つれえ(苦しい)だろ、かなりよ…。
知らねえよ、そんなこたぁ。好きでやってるんだろ?
好きも嫌いもねえよ、それだけ惚れてんだよ、その女に。
その馬鹿女にか?
馬鹿じゃねえよ、女は。
じゃ、なんだってのさ。大して売れねえ自分の作品をずっと賛美し続けてくれてきた一人のPatron男を恩も忘れて、鬱陶しさを感じた瞬間に面倒になってすかさずブロックしたんだろ?どうせよぉ。
お前さ、お前の糞くだらねえ先入観と固定観念でものを語るのはよせよ。
何、お前、怒ってんのか?
怒ってはいないさ…。
で、そいつ、だれなんだ?いるのかよ、そんなパーフェクトバカ。
いるさ。そんな哀れな男が、宇宙の端っこにね。
お前、見たのかよ。そいつを。
❝見ないで信じる者は幸いである。❞
❝ワザワイ❞だろ?
❝サイワイ❞だ。イエスもそう言っている。
ヘッ。で、そいつがどうしたんだっけ?
俺はさ、真面目な話よ、そこまで哀れで惨めったらしい馬鹿で素直な男がよ、宇宙の何処かにいるんだぜ。俺はそれを確信する。だからさ、俺だって、そいつとまったく同じような経験をしたって良いんだよな、いや、寧ろ俺はそれをしてみてえよ、それでそいつと深い悲しみをShareできるんだからね、凄く面白えし、嬉しいじゃねえか。
おい、お前そんなこと言って、ハハハッ、そいつ、お前が俯瞰して観た今のお前自身だったって堕ちだろ?ワハっ。
…違うさ…。
否定するのかよ?未来のそれを経験するお前と今のそいつと何が違うってんだ?
…そいつは俺の未来だと言いたいのか?
だってお前はまったくそいつと同じ経験がしたいんだろ?同じ経験をするにはよぉ、まったく何から何まで同じじゃねえと無理じゃねえか?
いや、俺はまったく同じ経験をしたいなんて言ってない。良く似た経験さ。
でも本当の処はまったく同じ経験をしてえんだろ?
いや…違う…!っていうか、俺はそいつのこと何もしらねえんだぜ。
だからさ、お前の想像上のパーフェクトバカな生き物だろ?
俺が想像した瞬間に、もうそいつは宇宙の何処かに存在してんだよ。
オイ、さっきから気になってたんだが、なんでずっとMarvin Gayeの「I Want You」が延々とリピートされてんだよ?この店は。
…さあね。良い想い出でもあるんだろう。
…まあ良い曲だけどよ。で、オイ、そいつ今何遣ってんだ?そのパーフェクトバカはよォ。
オレは…いやそいつ…いや、おれは…俺は今朝から,まったくツイてなかった。
なんだ、犬のうんこでも踏んだのかよ。
もっと酷いものだ。
もっと酷えもの…キリストの踏み絵でも踏んだのかよ。
…俺は、何の罪で俺は此処迄、人から嫌われて見離される存在に成り果てちまったんだなァ。
おい,キリストの踏み絵ってのは踏まれる為のものとしてそこに展覧されている。そんでその踏み絵の横にはこう書かれてあんだよ。『どうぞ御自由に御踏みください。』とな。それを踏まねえで帰るならキリストに失礼ってもんだ。人間ってのは馬鹿で正直だからよォ、踏み絵としてそこにあって、自由に踏んでも良いんだとわかると踏んで屁ェこいて帰りたくなるものなんだよ。
…。俺のこの苦しみと悲しみがキリストに背いた罰だとお前は言いたいのか?
違うってのか?キリストとはこの世に何が善で、何が悪であるのかをはっきりと示した預言者であるんだぜ?キリストはこう言ったんだよ。『わたしはこの世に平和ではなく、剣を齎すために来たのである。』剣とは破壊させる為のもの。それから、切り分ける、選別する為のものだよな?つまり、イエスはこう言いたかったのさ。俺は人間の罪の意識を破壊する為に来た。そして俺は、罪の意識のある者と、罪の意識のない者とに選別し、自分に背く方を、つまり、罪の意識に苦しんで、悲しんでばかりいるパーフェクトバカたちを永遠に滅す。とね。
いや、逆だろう。イエスは『悲しみ嘆く者は幸いである。』と言ったんだ。イエスは善良な人ほど人が罪の意識によって苦しんで嘆き続けることを知っていたからさ。そしてその苦しみ、悲しみの深さによって、人は深く悔い改めることができることを知っていたんだ。イエスが破壊させるものとは寧ろ人が罪を忘れた罪悪のない意識なのだよ。
そうなのかなぁ、俺は罪悪心というものが皆無だからなぁ。じゃあ俺は滅ぼされちまうってのかよ?
罪悪心が皆無の者は滅ぼすとだれが言ったんだ?例えば幼児は虫を踏み潰しても何とも感じていないが、何者もそれを咎めようとはしない。何故なら言っても理解できる能力がないからさ。
俺がもしその馬鹿なガキの親なら、そのツラを思い切り引っ叩くね。言ってもわからねえなら痛みで思い知らせるしかねえからなぁ。
でもそいつはなんで自分が叩かれたのか全くわからねえから泣くばかりさ。
それはしょうがねえだろう、これが因果応報というもんだとそのPerfect未満バカに教えてやんねえとな。
お前、本当にそんな親になるつもりなのか?
俺が親?いつ俺は親になれんだ?どんな女も俺の情熱が暑苦しい上に寒々しいっつって俺に嫌気が差して去ってゆくってのによォ。
確かにお前が親になるなんざ、想像できねえが…しかし人間ってもんは親になった気持ちでこの宇宙を俯瞰しなくては、結句何も見えては来んのだよ。
そうか、ソイツはすげえ。そんでお前はその見えて来たものによって今お前の罪がお前を苦しめてるんだと想ってんだな?
いや、そんなことは本当のところは想ってないさ。
そんじゃお前はなんだってそんなに延々と苦しんで悲しみ続ける人生なんだよ?
…なあ、想像してみてくれよ。俺たちは全員、Racer(レーサー)なんだよ。登ってる山の天辺が一応一つのGoalなんだ。死ぬ迄、安全運転で行く奴もいれば俺みてえに全速力で突っ走り続けるバカもいる。俺は早くゴールに着きたいんだよ。スピードを上げ続けて走るためにはそれだけのEnergyが必要だ。俺は何故だかわからねえが、死のCurve(カーブ)を曲がる前ほどエネルギーが満ちて来て燃えてくるんだ。俺はスピードを落とすことなく全速力でその角を曲がろうとする。案の定、曲がり切れねえで俺の車は横転し、崖から滑り降ちる。それでWrecker(レッカー車)で引き揚げられてズタボロの俺はまたそこから〘RESTART〙だ。Rearview mirrorもHeadlightも、修復不可能になって来る。俺はいつもまるでこの世界に独りきりで存在しているように感じるんだ。俺はいつも寂しくてしょうがねえが、それでも俺は、スピードを落とすことはできない。俺には落とし方がわからねえんだ。みんな俺のことが理解出来ねえから、みんな俺をこう想ってる。
できるならば一生深く関わりたくはないDangerous Looney Mad Perfectバカってか?
そうさ。
Total Super Fool アホだな?
同じような意味合いを言い方を替えて二度言わんで良い。俺は、つまり、だれも本気で俺に近付こうとはしないんだよ。
だれも絶対に本気で近づきたくはないTotal Weirdo Nutcase Insanity ばか(トータル・ウィアードゥ・ナットゥケイス・インサニティ・バカ)だ。
でも俺は人と表面的関わりは死んでもできねえから深く深く闇の底までも引き摺り合ってく関わりを求めて関わるんだ。
そりゃだれとも続かねえぜ。
…はッ。俺だってよ、本当の本当に、魂が空になっちまうほど惚れた女がいたんだ。俺はその日、彼女を喜ばせる為にValentineのCakeを朝から作ってた。Decorationに俺の彼女への愛のメッセージを書くつもりだった。でもそれを書くまえに彼女がうちにやって来たんだ。俺は少し部屋を片付ける為にCakeのそばを離れた。そして戻ってきたら、テーブルの上には食べた残骸と化したCakeがあった。俺は彼女に問い質した。一体これはどういうことなのかね、と。すると彼女、気味の悪い笑みを浮かべて俺に言ったんだ。二月なのに彼女は暑さを感じて窓を開けた。そしたら1匹の大きなアシナガバチ(Paper wasp)が  🐝¯­­--­­_ぷーん。と言いながら飛んで部屋のなかに入ってきたんだ。彼女はそいつを見つめてた。するとそいつは旋回したあと、Cake上の中空に止まって自分のケツの先から、まるで出産するかのように白くて小さな球体のチョコを出して、Cakeのその表面にチョコペン風に点描し始めたんだ。書き終わるとそいつはまたぷーん🐝 𓂃 𓈒𓏸.。oஇと言いながら外に飛んで行った。そこにはこう書かれてあった。『君は在って、無い。』つまり"君は《在る》と同時に《無い》"とアシナガバチが彼女の為に書いたんだ。彼女はそれを、一人で食べた。俺と分けて食べたくなかったって彼女は言ったんだ。俺は泣きながら彼女に言ったよ。良いかね、それはまさしく天からのMessengerだったんだ。そんな素晴らしい奇跡を、ほとんどの人は、経験することなく死んでゆく。何故かわかるかい?信じちゃいないからさ、そんな奇跡が本当に起こり得るとはね。馬鹿げてるだろう…僕は君とそれを分けて食べたかったのだよ、真に…。彼女はとても嬉しそうに笑ってた。その、一ヶ月後のことだった…。
おい、俺ァその話、もう何万回と聴いたぜ。もうその腓(こむら)返りをしている間に浮かぶ奇怪な話みてえな過去を話すのはよせよ、もっと楽しい話をしようじゃねえか。
…彼女はWhitedayに死んだ。白い日に、彼女はまた啓示を受けたんだ。それは天使からの無言の啓示だった。純白の鳩が、窓から入って来て、それで、それで…
おい、良いからもうやめろって…
それでその鳩のケツから、最高に濃度の高いヘロインが出て来て彼女の口元へと注がれつづけたんだ。
おい、もう烏が寂しげな声で鳴き始めてるぜ、夜が明けたんじゃねえか?
純白の鳩は、純白の霊であり、それはイエスという花嫁だったんだ。彼は彼女を夫として選び、天に連れ去った。人の子の精液をその内へ注がれた者は、もはや此処では生きてはゆけないのだよ。
なあそれより俺の話を聴いてくれ。一人の男が、たった一人、愛し続けた女から見棄てられる。女は本当の愛に目覚めたんだ。女は男に言うんだ。彼に自分の全てを捧げると。男は嫉妬に狂いながら相手の男を監視し始める。だがその男を知れば知るほど、男は嫉妬の炎に苦しむんだ。何故なら、そいつはPerfectなんだよ。
そいつもPerfectbakaか。
おい、真剣に聴けよ?それで、そうそのパーフェクトバカ。じゃねえ、Perfect野郎、そいつは自分の知る男のなかで最高にCoolなんだよ。男はとうとう、マジで嫉妬に我を失い、男を殺しちまうんだ。それでその最も素晴らしく最も美しい男の死体を見つめて、男は気付く。その男はイエスであることを。そして男は、自分の彼に対する狂うほどの嫉妬は、彼に対する真の愛の為であったことを知って、イエスの亡骸を、父を抱き締めるように抱き締め、男は恍惚のなかに、昇天するのさ…。真の愛とは、真の愛で相手を愛するとは、相手からの真の愛を、何よりも切実に求めることなんだよ。男が本当に求めていたのは、女の愛(Erōs)ではなく、イエスの愛(Agape)だった。そして女も…
おい、『agape』の、《aga》は、『贖う』の《アガ》だと知ってたか?『aganow』、"贖う"は、元々《アガノウ》とも言っていたんだ。”我、今、神の愛也”という意味だ。
なるほどなあ、ってことはよ、つまり、『贖い(アガナイ)』とは、”神の愛がない”って意味なんだな?
そうさ。…って違うだろ、お前。
HAHAHA…なあ…俺はもうそろそろ帰るぜ。お前と久々に話せて、俺は嬉しかったぜ。
おい、もう帰るのか?
 
男はそう自分の向かいの席に置いてある姿見に向かって言うと、男の後ろに去ってゆく男の後ろ姿が見えて、男はその寂しげな後ろ姿が見えなくなるまで振り返らずに見送った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Marvin Gaye - I Want You
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

If you really don't want it.

君は行きたい処はないの?
Is there anywhere you want to go?
ぼくは此処にいたい。
I want to stay here.
此処はとても酷い地獄だけれど、それでも良いの?
It's a hell of a place, but is that okay?
…ぼくは知ってるさ。
...I know.
君はずっとずっと苦しんできたね。
I know you've suffered a lot.
ぼくは幸福な時もあった。
I've been happy at times.
君は幸福を知り、悲しみを知った。
You've known happiness and you've known sorrow.
君は幸福を知るほど、悲しみを知った。
The more happiness you know, the more sorrow you know.
君は幸福な時、愈々悲しかったね。
The happier you are, the sadder you are.
ぼくは幸福を恐れている。
I'm afraid of happiness.
君は幸福を感じるとき、罪を感じる。
When you feel happy, you feel guilty.
ぼくに罪はない。ぼく自身が罪なんだ。
I'm not guilty. I am the sin.
君は罪ではない。君は恐れだ。
You are not a sin. You are fear.
ぼくは恐れている。ぼくは衣服を恐れている。
I'm afraid. I'm afraid of clothes.
衣服が今日、夢の中でぼくに後ろから襲い掛かってきた。
The clothes came at me from behind in a dream today.
それは本当に酷い悪夢だ。
That's a really bad nightmare.
あれは真の心霊現象だ。
It's a true psychic phenomenon.
君は逃げた。
You ran away.
ぼくはぼくの部屋の中で逃げた。
I ran away in my room.
君を襲った衣服は黒っぽい色をしていたね
The clothes that attacked you were blackish in color.
うん、それは生きているようだった。
Yeah, it was like it was alive.
それは君の恐れだ。君の恐れは真に生きている。
That's your fear. Your fear is truly alive.
別の衣服が、玄関のドアの前に吊るされていて、そいつの胸には顔があった。
There was another garment hanging in front of the front door, and it had a face on its chest.
そう、幾つか顔があって、君はそれを邪悪なものだと感じた。
Yes, there were several faces, and you felt they were evil.
ぼくはその服を選んだことを後悔した。
I regretted my choice of clothing.
でもその衣服は、君が選んだ時は顔がなかったじゃないか。
But the clothes didn't have a face when you chose them.
うん,ぼくが顔を恐れたから、ぼくの衣服は顔を持つようになった。
Yeah, because I was afraid of my face, my clothes came to have a face.
君はずっとずっと、衣服に悩まされてきた。
You've always been bothered by clothes.
ぼくはずっと衣服を恐れて来た。
I have always been afraid of clothes.
衣服は,肉体を象徴している。君という霊的存在は肉体の全てを恐れている。
Clothes symbolize the body. You, a spiritual being, are afraid of everything physical.
肉体が存在するようになり、この世界に拷問の苦痛が存在するようになった。
When the body came into existence, the torment of torture came into existence in this world.
君がそれを恐れたからだ。
Because you fear it.
全ての肉体は、真に恐ろしいものだ。
All flesh is truly terrifying.
君が恐れなければ、肉体は何処にも存在しなかった。
Without your fear, there would be no bodies anywhere.
ぼくの恐れが、肉体というものを創造した。
My fear is what created the body.
肉体は、それはただそれだけで、生きている。
The body, on its own, is alive.
君の恐れは真に生きている。
Your fear is truly alive.
肉体は、ただそのものだけで、生命だ。
The body, just by itself, is life.
君は真に生きている。真に生きる者が創造するもの、それは真に生きている。
You are truly alive. That which is created by the truly alive, is truly alive.
僕を襲った彼らは、彼らは生きた死者だった。
Those who attacked me, they were the living dead.
君の恐れ、それは死に行くものたちだ。
Your fear, it's the dying ones.
今、それはぼくの中で生きている。
Now it is alive in me.
君はかつて、真の永遠の死者だった。
You were once the true and eternal dead.
ぼくは恐れた。
I was afraid.
きみは恐れた。
You were afraid.
永遠に生きるということを。
afraid of living forever.
そしてぼくらは、ぼくらの恐れそのものになった。
And we became our fear itself.
永遠に生きるというぼくらの恐れ、それがぼくらの夢(この全ての想像が具現化する現実)で、永遠に死に行く者たちを演じ続けているのさ。
It's our fear of living forever that keeps us playing the eternally dying in our dreams (the reality in which all this imagining materializes).
 
 
 
 
 
 
 
 
 



 
Scattle - Fight The Nightmare



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Selfish Greedy Misery

僕らはついに遣ってしまったんだ。
何を?
見境なく、あの、史上最高の未確認飛行物体を、撃ち落としてやったのさ。
メラメラ燃えて、眩しかったぜ、アイツ。
藁にもすがる思いで這いずってきやがって、しこたまこちとらBackdrop決めて彼奴は。
どうした?
死んだよ。
お前、まさか、死んだのか。
死ぬことないだろうに。
お前が遣ったんだろ。
僕らはついに遣ってしまったんだ。
何を?
昨夜むくんでた足を切り落としてやったんだ。
誰の?
俺の。
俺の足は踊って言った。
『もうじき春だなあ。』
俺は言ってやった。
「お前、頭可笑しいんじゃねえのお?」
あいつは楽しげに笑いながら海の方へ走ってって、そのうち、見えなくなった。
俺は遣ってしまった。と想った。
俺の足だからなぁ。
代わりに、葦を足にしたんだが、
どうした?
いや、へなへなで、これじゃあ蛭児だ。
俺ァ蛭児だ。
僕らは遣ってしまったんだ。
あの夜。ただ遊べる金が欲しかったんだ。
たった七日間、僕らは遊んで暮らす金が欲しかった。
あの嵐の晩、強盗に入った団子屋の親父がまさかの、マフィアのボスだった。
僕ら三人、全員、手と足の指を一本一本ずつ、見沢知廉みたいに、小さな小さなナイフでゆっくりゆっくりと削るように切り落とせ。そう顳かみに銃口を突き付けられて言われたんだぁ。
嗚呼、絶体絶命の週末。目の前の壁に何故か”力饂飩”っていう掛け軸が掛かってた。
意味がわかんねえなあ。俺はそう想いながら、手指と趾二十本、痛みこそ最高の快楽だと己に言い聴かせながら脱糞しそうな想いで切り落としてやったんだ。
こんなことになるならさ、俺は仏陀を目指して頭丸めて出家するべきだったよ。
今からでも遅くない。
そう、俺は、俺達は、今からでも遅くはないさ。
指はもうねえけどなあ。
愛しいあの娘の酒で荒れた紅い頬を、俺の、長く細い指で撫でるのが好きだった。
彼女は俺に言ってくれたんだ。
貴方のなかで何よりも、手の指が美しいと。
その指で、彼女の好きそうな音楽を作ったり、彼女に愛の手紙を書いたり、そう…
俺が燥いで飛ばして事故った車の助手席で死んだ彼女の骨も、俺は拾ったよ。
凄く、熱かったけど。
嬉しかったのかなあ…。彼女。あん時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Scattle - Selfish Greedy Misery