ベンジャミンと先生 の検索結果:

ベンジャミンと先生 番外編「シスルとベンジャミン」

…ロンに乗り込んだ。 ベンジャミンと先生を乗せた真っ赤なエリュトロンは低い唸り声を上げて発車し、キャンプ場に向かって、走り出した。 二人を乗せたエリュトロンは、少しのあいだ下道を走っていたが、やがて高速トンネルに入った。 一つのトンネルが30分以上は続くトンネルをいくつも走り続けなくてはならない搭乗者の為に、トンネル内はまるで超空間にワープしたように視覚を刺激するホログラフィックディスプレイがあらゆる空間を作り出し、決められたレール上にタイヤが嵌るトンネル内ではドライバーは下道…

ベンジャミンと先生 「羊飼い少年とオオカミ」

「みんなおはよう。ってもう終了時間まであまり時間はないが」 先生がしんどそうにそう言うと静かに席についているベンジャミンが真っ直ぐに先生を見つめて言った。 「先生、もしかして今日も、二日酔いですか?」 先生は恥ずかしがる素振りも見せずベンジャミンの透き通った眼差しを見つめ返し堂々と答えた。 「そうだ」 ベンジャミンは口角を上げてにやついたが何も言わなかった。 教室はしんと静まり返っている。 「なんだこの沈黙は」 先生がそう言うとベンジャミンが幼児のように笑って無邪気に訊ねた。…

ベンジャミンと先生 「二人の秘密」

今日は学校はおやすみ。 ベンジャミンが今朝に起きてマイパソコンを起動させようとすると、なぜかパソコンはプッシュゥという音が鳴りつづけるばかりで、まったく起動しなかった。セーフモードなどあれこれといろんな方法を試してみたが、まったく起動もしなかった。ベンジャミンのパソコンはどうやら壊れてしまったようだ。ベンジャミンはこんなこともあろうとちゃんと外付けハードディスクにバックアップを取っておいてほんとうによかったと胸を撫でおろした。 ベンジャミンはこうとくれば、さっそく、先生の家に…

ベンジャミンと先生 「先生の手紙」

新しい年、2017年がやってきた。 でもベンジャミンはまだ17歳。 ベンジャミンは朝起きると寝巻きの半袖のTシャツのままで外に出て、腕をさすって犬のように身震いしながらポストの中を覗いてみた。 先生から年賀状は届いているか知らん。 すると一枚の年賀状が尋常でない状態であるのを発見した。 ベンジャミンは眼鏡をかけていたが目をわずか4センチくらいの距離に近づけてその書いてある文面を読んだ。 米粒よりも小さな文字だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…

ベンジャミンと先生 「カシス海」

さあ今日は、いい天気だな。曇ってるけどな。あたたかい日だ。この昼下がりのこの眩い空、ひじょうに微睡みたいよ、先生はな。 では今日は、ベルギー最大の幻想文学作家ジャン・レーのギリシャ世界の古代神を現代に甦らせた、愛と復讐の壮大なドラマとちまたで言われている「マルペイチュイ」を今から一緒に読もう。 読みたい人間は手を挙げなさい。 よし、ではベンジャミン、おまえから読みなさい。 「はい」 ベンジャミンは利口そうな顔で静かに立ち上がるとみんなの前で音読し始めた。 「マルペルチュイの館…

ベンジャミンと先生 「擬態」

今日は学校はお休み。 先生のおうちにベンジャミンは昼前にやってきました。 ピンポーン。 先生がドアを開けるとベンジャミンがいつもの屁を少し我慢しているような顔で突っ立っている。 「お、ベンジャミンか、なんの用だ」先生があくびをしながらそう言うとベンジャミンは眼鏡が若干ずり落ちたままこう言い放った。 「先生!ぼく、今日すごい夢見ちゃったんだ。先生、どんな夢か知りたい?」 「おお、それは聞きたいね。しかしその話を聞く前に先生は腹が減ったから先に朝食にしよう。さあ上がりなさい」 ベ…

ベンジャミンと先生 「ベンジャミンの補習」

先生は次の次の日、ベンジャミンのために、放課後に残して補習授業を行うことにした。 先生はベンジャミンに「言いたいことを言いなさい」と言った。 ベンジャミンは先生に向かって言った。 「先生、ぼくはほんとうは自分がすべてを諦めている人間なのだと感じます」 先生はベンジャミンを静かに見つめると思考の心底に沈んだ顔で左腕をしきりに掻き毟り半袖のシャツをめくって二の腕をじっと気にした後、おもむろに話し出した。 「ベンジャミン、先生の言うことをよく聞きなさい。よく聞きなさい、というのは、…

ベンジャミンと先生

先生がドアを開けた。各々は自分の席に着く。先生が生徒達に向けて言い放った。 「はい、立て」 「はい、礼」 「はい、座れ」 「では今日の1限目の授業を始める。今日から新しい本だ、昨日渡した本、スウェーデンボルグの霊界日記だ、もう読み終った人間もおることでしょう、でも先生はまだ読んでいない、心のどこかで、楽しみにしている、では読みたい人、立て」 立った人間の中から先生はベンジャミンを選び、言った。 「では最初はベンジャミン、読め」 ベンジャミンは賢そうな顔立ちで読み始めた。 「エ…