Last summer

海沿いの道を走りながら、彼が運転席から助手席で眠っているわたしを見て微笑む。
まだ暗い時間から出てきたから、わたしを起こさないでおこうと彼は想う。
窓を開けると、少し肌寒い風が入り込んでくる。
夏はもうすぐ終るのだろうか。
彼は感じる。
空が明るくなって来ている。
でもまだ、夜は明けていない。
この長い夜のなかを、ずっと運転してきたけれど、
まだ夜は明けていない。
でも彼は感じる。
もうすぐ、夜明けは近いのかもしれない。
彼らは…元気でいるだろうか…?
此処からでは、何もわからない。
何も…此処からは見えない。
わたしは、眠りながら涙を流している。
彼は心配になって、起こそうかとわたしの頬に手を伸ばす。
わたしの涙が彼の右手の指に滴る。
とても悲しい夢を見ているのかもしれない。
でも彼は、わたしの頬を優しく撫でたあと、手を離す。
彼は想う。
もう少し、眠っていたほうがいいかもしれない。
まだ、夜は明けないから。
あたたかい風が、ふいに窓から入ってきて、彼の綺麗な栗毛の髪と髭が優しくゆらめく。
陽が、海に反射しながら差してくる。
彼の左の横顔に、陽が反射して美しく煌めき、暗い影を右の横顔に作る。
わたしは夢のなかで想いだす。
彼が、こう言って、わたしをドライヴに誘ったんだ。
「夜明けに向かって、僕と一緒に永遠のDriveに行かないかい?」
まだ、夜は明けていない。
彼の運転する車のなかで、わたしは独り、眠っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

愛するロニー・マクナット(Ronnie McNutt)氏へ捧ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Secret Attraction - Last Kiss