陽光

ずっと幻影を見てきた。
光が見えるという幻影を。
闇のなかでわたしの霊と、話をしてきた。
それがどこまでも、わたしに光を与えてきた。
悲しげな光はわたしに安らぎを与え、それ以外はわたしに翳りを与えた。
夜には凍えたわたしのちいさな足先を、あたたかいお父さんの足先にこすり付けると、
お父さんはびっくりして声をあげた、あの幻影はわたしに翳りを与える。
父の14回忌の今日、わたしの足先はまだ冷たく、わたしに翳りを与える。
あの日の幻影から、遠ざかるほど、父もまた、遠ざかり、翳りに光は増す。
幻は光であり、その影にわたしは不安を覚え、近づける翳りに陽光を見る。
それがどこまでも、わたしに翳りを与えてきた。
闇のなかでわたしの霊と、目を交す。
暖かい光はわたしに不安を与え、それに渇き、追い求めずにはおれなかった。
昼には温もりの手を繋ぎ見上げれば、面を被った顔の見えないお父さんがおり、
わたしはびっくりして声をあげた、あの日の幻影に、わたしは陽光を見る。
でもわたしの内に、哀しくないものはあろうか。
哀しげな光と哀しげな翳りのほかに、あろうか。
闇夜には凍えた陽光が、暖かい翳りに照らされ、眠るわたしとわたしの霊は、
めざめさせられては喪いし日を心做しか遠ざかりしまま夢む。
なにごとかも日を追いし、日没まえにあまさず眠るまま夢む。
今見た光に翳り射し、明日見る翳りに射す光は、顔の見えぬ父の面様の陽光の様。