2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

Sad Satan

彼女と別れて、4年半が過ぎた頃のことだった。同僚の送別会のあと、ウェイターの男はタクシーを呼んだ。酷くお酒を飲みすぎてしまったからである。皆、帰ったあとの薄暗いカフェにはウェイターの男の姿だけが窓から見える。ソファーの席に深く腰を沈めて目を…

ミルク先生とシスル

『わたしは以前、数ヵ月間だけ、シスルという生き物を飼っていたことがある。』 教室の窓から、肌寒い春の風がシスルの真っ直ぐな少し伸びた前髪を揺らし、ミルク先生は静かに目を瞑る。シスルは今日も、大好きなミルク先生に自作の詩を放課後に読み聴かせて…

暗灯

今、きみを知るとき。きみが生まれる。宇宙の、見えない場所で。きみには未来もなく。過去もなく。今もない。きみは今も、いない。きみには夢もなく。世界もなく。星もない。きみは今も、観ない。今、時が過ぎ去るとき。きみが生まれる。闇の底の、独りの宇…

ひよこまめのぽーぽー

(この行を消して、ここに「迷い」と「決断」について書いてください) こう、俺の部屋の窓から、俺は遠くを観てるとするやんか。 すると、あの長い、直立して立っている棒はなんなんだと気づくんだね。 あれあんな棒、立ってたっけ。 で、あれはなんなんだ…