(この行を消して、ここに「迷い」と「決断」について書いてください)
こう、俺の部屋の窓から、俺は遠くを観てるとするやんか。
すると、あの長い、直立して立っている棒はなんなんだと気づくんだね。
あれあんな棒、立ってたっけ。
で、あれはなんなんだと、俺はじっと見つめて、考えるんだ。
すると、約一分くらい経ったあとに、あああれは、あれは。
避雷針やんけ。俺はそれにやっと気づくのだけれども。
その気づくまでの約一分間、俺は別のことを想像しているんだ。
あれは人間が、天から降ってきて突き刺さるために、あすこに生えておるのだと。
で、その為に、あれはあすこに生えているというのに、何故。
天からヒトが降ってこないのだ。可笑しいじゃんけばんやんさ。
天からヒトが、降ってこおへんねんよ。
天からヒトが。いつまで経っても。
天からヒトが、あれに突き刺さるためだけに。降ってこないのだよ。
何一つ、面白くもなんともない風景が、そこに、在るばかり。
成る程そうか。俺はその理由がひとつ、わかったんだね。
あれに、あの棒に、巻き付いているべきものが、巻き付いておらないからではないかと。
本来であるならば、巻き付いていないはずがないのにも関わらず、あれがあすこに立っていることがおかしいのだ。
あれがね。あれが。白い、くにょくにょで、うねうねで、硬いやつ。
この世界は、確実に、何かがおかしい。
あれが、あれに、巻き付いていないなんて…。
在るはず無いだらうに。
この世界は、何かが、確実におかしい。
巻き付いてる?否…。俺は何遍と、顎が、若干しゃくる感じで、凝視したけれども。
巻き付いて、あらへんねやわ…。矢張り、矢張り、巻き付いてあらへんねやわ。
俺は、あまりにも、目を疑いすぎて、疑いすぎてシマッたがために。
目が、俺の目が、両の目共々、もう目を辞める。お前が悪い。お前が全部悪い。
そう言って、俺の両目が、同時に奥に引っ込んだが為、俺は眼の前が、突如真っ暗になった。
えっ、何?これ何?これ何?これは。これは。これは。これはあれか。
アセンションか。とうとう、太陽が闇に覆われ、地球にすべての光が届かなくなったのか突然。突然。
何の、訪れも、なしに。ということはあれか。今にも、凍え死ぬほどの、極寒が直ぐ様遣って来てしまうのではないのか。
太陽が完全に闇に覆われたら、直ぐにそうなるはずである。
だのに、俺は今、窓の外から流れ込んでくる生暖かい6月の風を、生身に受けながら、またちょっと暑くなってきたな、なんて、感じてるばいね。
んぜんぜんぜ?なぜなぜなぜ。おかしおもわへん。おかしおもわへん。こんなことって、俺初めて。
めが、ぐすりと鳴くから、めぐすり。そんなことも、わからんのかあ、どあほ。
今すぐ今すぐ今すぐに、めがぐすりと、鳴くから、めぐすりを探せ!
俺はもう何を遣ってるのかわからなくなるほど、狭い部屋の中で踊り狂い、「めがぐすりと、鳴くから、めぐすり!」と叫び歌いながら、めぐすりを部屋中探し回った。
でも、俺の目の前は真の暗闇であった為、何を掴んでも、この両手で何を掴んでも、それはフラミンゴとしか想えなかった。
何故、俺の部屋のなかに、フラミンゴしか居ないのか。そんな問が浮かぶ瞬間すら、奪われるほど、俺の両目から大量に、尿が漏れ続けているような感覚がした。
俺は、今、目から、放尿しているのか。咄嗟に、そう想った瞬間俺は、目に手を伸ばしくわわわわわわわん、まままままままままままま、ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽっぽ、ぽーぽー、ぽーぽー、ぽーぽー、ぽーぽー、ぽーぽー、ぽーぽー、ぽーぽー、ぽーぽー、ぽーぽー、ひよこまめのぽーぽー、ひよこまめのぽーぽー、ひよこまめのぽーぽーを、俺は飼っている、気がする。めが、ぐすりと、鳴くから、ぽーぽー、ぽーぽーを、伊豆まで、送って行かなけりゃあ、ならねえぜ。ぽーぽーはそして、俺の、右目の穴んなかに頭を突っ込み、俺の右目を嘴で掴んで引っ張ろうとした。
あぎゃんっ。俺は激痛でまたも、右目から大量の放尿をし、ぽーぽーは、俺の放尿をまともに顔面に喰らったのか、ぽーぽーと、鳴いていた。
俺はぽーぽーが心配で、ぽーぽーと呼んだ。ぽーぽー、ぽーぽー、ひよこまめのぽーぽーや、どこにおるんやぽーぽー、ぽーぽー、ぽーぽー、俺の声聴こえるぽーぽー、俺の部屋にまだいるぽーぽー、俺をひとりにしないでぽーぽー、俺が見えるぽーぽー、俺の目引っ張ってくれてありがとうぽーぽー、俺の目掴んでくれてありがとうぽーぽー、少し暑くなってきたねぽーぽー、俺の側にいるぽーぽー、涼し気な、風が入ってきてぽーぽー、子どもたちの声、聞こえてるぽーぽー、車の走る音、聞こえてるぽーぽー、飛行機の飛ぶ音、聞こえてるぽーぽー、小鳥が、鳴いてるぽーぽー、めが、めがぐすり、鳴くから、ぽーぽー、目がぐすり、泣くから、ぽーぽー、めぐすり、ぽーぽー、めに、めにぐさり、刺さるから、めぐさり、目腐り、ぽーぽー、めぐさりを、めぐさりを、俺はやっと、見つけたんだねぽーぽー。ありがとう。これでやっと、此処から、この子宮の出口から、堕ちる、ことの迷い、落とし、俺は、下の、世界、下界に、堕ろされたあとの人生を、歩む決断をしたよ。
すべてに、光、在らん、事よ。
『ひよこまめのぽーぽー 完』
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