iが終わり、きみがはじまる。

iが終わり、きみがはじまる。

きみは、iがない。

iは、きみのなかにない。

終わったあと、きみは生きてきた。

でもきみは、やっと見つけた。

きみは、iを見つけた。

ちいさな、肉体を纏ったそのi。

きみははじめて、iを見つける。

はじめて、きみはiと出会う。

ちいさく、それがきみに向かって、微笑みかける。

きみはそれを、そっと抱き上げる。

ちいさなちいさなその手を、握る。

それはきみに向かって、微笑む。

きみを、求める。

それはちいさな手で、きみの手を掴む。

きみの、その大きな手を、それは求める。

きみは、父親になる。

iの望む父親。

iの求む父親。

iを、愛する父親。

iはきみを、求める。

きみは、iを一から、育てる。

ずっとずっと、それを願っていた。

あたたかい、ちいさな手を、冷たい、大きな手で、触れる。

きみはiを、なにより愛する。

なにより、慈しむ。

ゆいいつの、光。

ほかは、闇のなか。

遠くで、どうぶつたちの、悲鳴。

ほかは、闇のなか。

きみは、安心し、おそれる。

闇のなか。

ああ、とても、悲しい関係だった。

ぼくとお父さん。

ゆいいつの、光。

ゆいいつの、闇。

だれより、愛したかった。

だれより、愛されたかった。

ゆいいつの、i。

もうとっくの昔に、それはきみと共に、終わった。

すべてが喪われ、そこにはだれも、いなかった。

闇のなか。

だれも、いなかった。

お父さんも、ぼくも。

いなかった。

お父さんは、ぼくを助けられなかった。

ぼくは、お父さんを、助けられなかった。

だれも、そこに、いなかった。

静かだ。

とても。

だれも、まだいない。

ぼくには。

でもきみは、iを見つけた。

そしてその終わりを、きみはいま見ている。

闇のなか。

ゆいいつの光を、握り締め。

きみはその終わりを、今見ている。

なぜだろう。

不思議なんだ。

闇のなかを、きみは今、見ている。

きみと、きみに抱かれる息の子を、闇はじっと、見つめている。

iを、きみはみずから、手放す。

なぜだろう。

とても不思議なんだ。

いったいそれは、なんだろう。

それは、なんだろう。

iはきみを、切実に求めている。

きみは、iを手放す。

本当に不思議なんだ。

きみはiを、切実に、なにより求めている。

iは、きみを終わらせる。

なにも、なにも、そこにはない。

なぜなんだろう。

とても不思議だよ。

闇は、iを包み込む。

もう二度と、目を覚まさない、眠りのなかへ。

iは、きみを、包み込む。

闇のなか。

とてもとても静かな。

闇のなか。

iは、iを、終わらせる。

そしてすべて。

闇のなか。

もう二度と。

憂うことも。

嘆くことも。

悲しむことも。

苦しむことも。

ない。

すべては闇のなか。

闇のなかへ。

きみは今、向かっている。

ゆいいつの、光を。

握り締めながら。