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祝福

今日であなたが死んで十三年が過ぎました。

 

お父さん。
わたしは死ぬまで苦しみたいのです。
わたしがあなたを死なせてしまったことを死ぬまで苦しんで悲しんでいたいのです。
だからどうか、わたしの苦しみを悲しまないでください。
わたしは自分でそう選んだのです。
わたしの悲しみと苦しみを、どうか悲観的に思わないでください。
むしろ、わたしが願ったものをわたしが受けつづけていることに共に喜んでください。
わたしは、毎日生きているという実感がありません。
毎日、亡霊のように夢の中を生きているような感覚でずっと生きています。
わたしはもう、此処に生きていないのかも知れません。
ではどこに、生きているのでしょう。
わからないのです。
でもわたしは日々、喜びや悲しみや苦痛を感じて生きていることは確かです。
もうどこにも存在しないのに、存在しない存在として生きているようです。
「わたしを抱きしめてください。天の父よ。」そうどのような顔でわたしは言えますか?
わたしは今でもあなたを変わらず愛しています。
だから苦しみつづけたいのです。
悲しみつづけたいのです。
自分しか愛せない者のように。
わたしを失う人はもうだれもいません。
わたしはすでに失われた者だからです。
わたしはきっと、あなたとは前世で恋人だったときがあったはずです。
あなたは今でもわたしの父であり、わたしの過去の恋人でした。
わたしは常に渇きます。
あなたの愛に。
今でもあなたがわたしを呼ぶ声が聞こえてきます。
「こず恵」
もうすぐあなたが息をしなくなった時間だ。
お父さんが苦しまないようにこず恵は静かにしています。
わたしはきっとあなたの傍へゆくにはあんまりまだ遠い。
時間が過ぎるのが恐ろしいのは時間だけが過ぎてもあなたに会えないことがわかっているからです。
まだまだわたしの苦しみが足りません。
あなたに再会するためのわたしの悲しみがまだぜんぜんたりません。
わたしは今でもあなたに愛されています。
確信できます。
もしあなたが、家畜に生まれていたなら、あなたをわたしは食べてしまったかもしれません。
罪悪のうちにあなたを味わい、あなたを消化し、あなたを排泄したかもしれません。
あなたを知らず知らずに拷問にかけ、あなたをわたしは殺したかもしれません。
わたしの罪は、きりがみえません。
きれめなく、わたしの罪がわたしをくるしめつづけることを望みつづけているからです。
どうかあなたの娘であるわたしと共にそれを喜んでください。
わたしの中にあなたは住んでいてあなたの中にわたしは住んでいます。
わたしは生きるほどに、あなたの記憶が霧の中へ消えていくようです。
わたしはあなたを、追いかけることもできません。
わたしはまだあなたに触れられないからです。
でもあなたはいつでもわたしに触れてください。
わたしを慰めてください。
あなたのおおきなあたたかい手をわたしは憶えています。
わたしが熱をだして寝ているとあなたが仕事から帰ってきて、わたしのおでこに手をあてたのです。
わたしはそれまでとても苦しかったのが嘘のように楽になったことを憶えています。
あなたは子を癒す力がありました。
今でもわたしを癒してください。
わたしはあなたがわたしを癒すことを知っているので好きなだけ苦しみつづけることができます。
もうあなたが静かに息を引きとった時間は過ぎた。
たった13年間でわたしはこんなに変化しました。
わたしの悲しみはますます深まってきています。
共に祝福してください。わたしの最愛であるお父さん。
この悲しみと苦しみはあなたのわたしへの愛の証です。
これからもどうかわたしを愛してください。
わたしがあなたをすっかり忘れてしまったあとも。
お父さん、わたしを愛してください。