読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

昨日の子供

震えている昨日を抱いてあげると昨日はたまごを産みました。

たまごを育てる気はなかったので何もしませんでした。

たまごはずっとたまごのままでした。

私はある日たまごを割りました。

たまごの中には何も入っておりませんでした。

私はそれを見て、全ての血管が縺れそうな思いになり、わっと泣いたのでした。

私は昨日を愛しながら憎んでおりました。

そういえば昨日はたまごを産むと何も交わさずすぐに死んだのでした。

私はそれをようやく思いだし、今度はそおっと泣いたのでした。

私はすうっと突然確信に満ちました。

たまごを割った瞬間子供は逃げたに違いない。

探す気はありませんでした。

出てくるのを待つ気もありませんでした。

子供は怯えて部屋の隅の見えない場所にいるでしょう。

私は呼びもしませんでした。

子供はずっとそこにいました。

視線だけいつも感じたのです。

私が眠りに就く時だけ決まって側に来るのでした。

昨日の子供は今日の子供になろうとしていました。

明日の子供になる前には子供を捨てるつもりでいました。

子供はそれに全く気づいていませんでした。

子供は相変わらず小さい。

子供の顔を私は知らない。

私は子供は捨てるのはやめ、私がこの家をでてゆくことにしました。

しかし眠りに就くと子供は側にいました。

私は子供に何一つ与えはしなかった。

子供が側に来ても撫でることすらしなかった。

来るのを拒みさえしなかった。

私の子供に対する関心は次第に真っ赤な蕾のように膨らんでゆきました。

しかし私が子供を愛した瞬間子供は死んだのです。

私の胸に咲いた真っ赤な花は一気に枯れ果て、床の上で音も無く泣いていました。

私は初めて淋しさを覚えました。

 

 

私はやがて死んだのです。

すると子供は側にいるのでした。